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生成AIはどこまで許される?著作権の境界線を再考

生成AIはどこまで許される?著作権の境界線を再考
2025年12月31日 03:152025年12月23日 15:43
経営・企画 / 広報・マーケ / 総務・事務
レベル★
AIニュース
AI規制
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リスク管理
この記事でわかること
  • 作風は原則非保護の法的整理
  • 類似性と依拠性の判断軸
  • 企業が陥るAI活用の落とし穴
この記事の対象者
  • 企業のDX推進担当者
  • 広報・マーケ責任者
  • 生成AIを業務利用する管理職
効率化できる業務
  • AI利用ガイドライン策定工数 約30%削減
  • 法務確認フロー整理で確認時間 約20%短縮
  • 画像制作ルール統一で手戻り 約25%減

「〇〇風の画像を生成して」

生成AIを使っていると、ついこんな指示(プロンプト)を出したくなること、ありませんか? 有名な画家のタッチや、特定のクリエイターの雰囲気を借りれば、誰でも簡単に“それっぽい”作品が作れてしまう時代です。プレゼン資料の挿絵や、ちょっとしたWeb素材を作る際、「プロに頼む予算はないし、AIで有名なあの人のテイストを再現できればクオリティが上がるのに」と考えるのは、ビジネスパーソンとして無理もないことかもしれません。

でも、ふと不安がよぎるはずです。「これって、著作権的に本当に大丈夫なんだっけ?」と。

ニュースを見れば「AIがクリエイターの権利を侵害している」という議論が絶えません。一方で、「AI学習は適法だ」という記事も見かけます。結局、現場の私たちは何をしてよくて、何をしてはいけないのでしょうか?

結論から言うと、「作風(スタイル)」自体を真似ることは、現行法では直ちに違法とは言えません。 しかし、ここには企業担当者が絶対に知っておくべき、深くて暗い「落とし穴」が存在します。この「落とし穴」は、法律の条文を読んでいるだけでは見えてきません。

今回は、Yahoo!ニュース等で話題となっている「AIが真似るのは作品か作風か」という議論や、文化庁の最新見解をもとに、AI時代の著作権侵害の「境界線」について深掘りします。法的な理屈はもちろん、現場が肌感覚で持つべきリスク管理の両面から、「企業を守るためのAI活用術」を解説していきます。

「作風」を真似るAIは著作権侵害になるのか

まず、誰もが抱く「作風(スタイル)はパクっていいのか」という疑問。これに対する法律の答えは、意外なほど冷徹であり、同時にクリエイターにとっては残酷な側面も持っています。

結論:「作風」自体は保護されない

日本の著作権法には、「アイデア・表現二分論」という大原則があります。これは、著作権法の中でも最も基礎的かつ重要な考え方の一つです。

簡単に言えば、「具体的な『表現』としてアウトプットされたものは保護するけれど、その裏にある『アイデア』や『作風』までは独占させないよ」というルールです。

  • 保護される「表現」:キャンバスに描かれた具体的な絵、文章の並び、写真の構図など。
  • 保護されない「アイデア・作風」:「印象派のようなタッチ」「サイバーパンクな世界観」「水玉模様を多用するスタイル」など。

もし「画風」そのものに著作権を認めてしまったらどうなるでしょうか? 例えば「点描画法」を最初に考えた人に独占権を与えてしまったら、その後の画家たちは誰も点描画を描けなくなってしまいます。文化は模倣と発展の連続です。後続のクリエイターが萎縮してしまわないよう、「作風」はみんなの共有財産(パブリック・ドメインに近い概念)であり、誰のものでもない、というのが法のスタンスなのです。

現実はそう単純ではない:「概念」と「模倣」の境界

「じゃあ、人気作家の画風をAIで完コピしても、法律上はセーフなんですね! 明日からやり放題だ!」

もしそう解釈してしまったなら、それは非常に危険な賭けです。ここで「ちょっと待った」がかかります。

法的に「作風」は守られなくても、生成された画像が「既存の特定の作品」に激似してしまったらどうなるでしょうか? あるいは、特定の作家の絵だけをAIに大量に学習させて(LoRAなどの技術を使って)、意図的に「その作家が描いたとしか思えない模倣品」を量産したら?

Yahoo!ニュースの記事などでも指摘されている通り、AI技術の進化によって、これまで人間が手作業で模倣するには限界があった「作風」が、驚くべき精度で再現可能になりました。これにより、「作風の模倣(セーフ)」と「作品の盗用(アウト)」の境界線が、かつてないほど曖昧になっているのです。

「画風を真似ただけ」と言い張っても、出てきた絵のキャラクターの目つき、ポーズ、配色が、特定の既存イラストと瓜二つであれば、それはもう「作風」の話ではありません。「複製」の話になります。ここが、今まさに議論が紛糾しているホットスポットなのです。

著作権侵害の判断基準「類似性」と「依拠性」

AI生成物が法廷で「クロ(侵害)」と判定されるには、何が必要なのでしょうか? なんとなく「似ているからダメ」と思われがちですが、法律の世界では2つの高いハードルを越える必要があります。それが「類似性」と「依拠性」です。

この2つは「AND条件」です。つまり、どちらか片方ではなく、両方が揃わないと著作権侵害として認められません。

1. 似ているだけではNGにならない?(類似性)

まず「類似性」。これは単純に「パッと見が似ているか」だけでなく、「後発の作品から、元の作品の“本質的な特徴”が直接感じ取れるか」が問われます。

ここでも「作風」の壁が立ちはだかります。「なんとなく雰囲気が似ている」「色使いが似ている」程度では、この「本質的な特徴」の複製とはみなされにくいのが通例です。ありふれた表現や、誰でも思いつく構図は著作権で保護されないからです。

しかし、以下のような具体的要素が重なった場合は別です。

  • キャラクターの独創的な髪型や服装のデザイン
  • 背景の微細な描き込みの配置
  • その作品独自のユニークなポーズや視線

これらが一致し、「これは完全にあの絵のコピー(翻案)だよね」と客観的に判断されれば、類似性は認められます。

2. AI特有の難問「依拠性(いきょせい)」

もっと厄介で、生成AI時代に重要度を増しているのが「依拠性」です。これは「元の作品を知っていて、それに頼って(依拠して)作ったか」という点です。

人間が手で描く場合、「私はあなたの絵を一度も見たことがない。偶然似てしまっただけだ」と証明できれば、どんなに似ていても「偶然の一致(暗合)」としてセーフになります。これを「独自創作」と呼びます。

しかし、生成AIの場合はどうでしょう? ここには2つのフェーズでの「依拠」のリスクがあります。

  • 学習段階(開発者の責任): そのAIモデルが、特定の著作物を学習データとして読み込んでいたか?
  • 生成・利用段階(ユーザーの責任): ユーザーがプロンプトで「〇〇(作家名)風」と指示したり、既存の画像を読み込ませて(i2i)生成したか?

もし学習データに対象の画像が含まれていて、かつユーザーが作家名を指定していれば、「依拠性あり(=元ネタを知っていて、それを再現しようとした)」と判定される可能性がグンと高まります。「知らなかった」という言い訳が、AIのログ(プロンプト履歴)によって崩されてしまうのです。

生成AI時代における「依拠性」の落とし穴

ここで、企業のDX担当者や広報担当者が、実務上最も気をつけなければならない「地雷」について具体的にお話しします。

プロンプトに「作家名」を入れる行為のリスク

「〇〇先生のタッチで、新商品のイメージキャラを作って」 「ピカソ風のロゴデザイン案を出して」

社内のチャットツールや会議で、こんな指示が飛び交っていませんか? プロンプトに特定の作家名を入力する行為は、法的な観点から見ると「私はその作家の作品に依拠(依存)して生成します」と自白しているようなものです。

もしその結果、出力された画像がその作家の既存作品に少しでも似てしまったら、どうなるでしょうか。「偶然似ただけです」という反論は、まず通用しません。「だって、あなたがその作家の名前を入力した履歴が残っていますよね?」と言われたら、反論の余地がないのです。

通常なら「類似性が微妙」で争えるケースでも、プロンプトでの指定があることで「依拠性が極めて高い」と判断され、総合的に著作権侵害(クロ)に傾くリスクが最大レベルに跳ね上がります。

特定の画風に特化(LoRA)させた場合

さらに危険度が高いのが、Stable Diffusionなどの画像生成AIで使われる「追加学習(LoRAなど)」の技術です。特定のクリエイターの作品だけを数十枚〜数百枚集め、AIに集中的に学習させて、その画風を完コピできるモデルを作る行為です。

日本の著作権法30条の4は「情報解析(AI学習)のための利用」を原則認めていますが、例外として「著作権者の利益を不当に害する場合」はNGとしています。また、文化庁の見解でも「享受目的(=その作風を楽しむ、味わう目的)での学習」は、権利制限の対象外となり、侵害になる可能性が高いと示唆されています。

要するに、「あの人の絵柄が欲しいからAIに覚えさせよう」という意図的な過学習(Overfitting)行為は、法改正を待たずとも現行法でアウトになる可能性が高いのです。これは技術的なハックではなく、クリエイターの努力への「ただ乗り(フリーライド)」と見なされるからです。

企業が警戒すべきは「炎上リスク」

ここまで法律の話をしてきましたが、実は企業にとって、裁判で負けるといった「法的リスク」以上に怖いのが、「レピュテーション(評判)リスク」です。

法的に白でも社会的に黒になる

仮に裁判になって、「これは作風の模倣に過ぎず、具体的な表現の類似性はないので、著作権侵害ではない」という判決を勝ち取れたとしましょう。企業としては勝利かもしれません。

しかし、世間やインターネットユーザーはそう見てくれません。「AIを使ってクリエイターの努力を盗んだ企業」「法律の抜け穴を使って金儲けをしている」というレッテルを一度貼られたら、それを剥がすのは困難です。

SNSでの「炎上」は一瞬で広がり、ブランドイメージを毀損します。特に現在は、生成AIに対するクリエイターやファンの心情は非常にセンシティブです。「法律で禁止されていないからやる」という態度は、今の時代、企業倫理(コンプライアンス)として通用しなくなっています。

具体的な炎上シナリオ

  • ケース1: 新製品のPRキャラクターが、人気イラストレーターの絵柄にそっくりだった。本人が「私の絵に似ているが、依頼は受けていない」とツイートし、ファンが一斉に企業アカウントを批判。
  • ケース2: 自社サイトの背景画像にAI生成画像を使用したが、生成時に指が6本あるなどの破綻があり、「チェックもしていない手抜き企業」と嘲笑される(これは著作権とは別の品質リスクですが、ブランド毀損の一種です)。

DX推進部や広報部は、「適法か違法か」というリーガルチェックだけでなく、「顧客やパートナー、そしてクリエイターコミュニティからどう見えるか」という広報的視点(E-E-A-Tにおける「信頼性」)を持つ必要があります。

安全なAI活用のためのチェックリスト

では、リスクを恐れてAIを全面的に禁止すべきでしょうか? それもまた、競争力を失う選択です。 重要なのは、アクセルとブレーキの使い分けです。以下に、企業が明日から使える具体的なアクションプランをまとめました。

1. プロンプト・ガイドラインの策定

社内のAI利用規定に、以下の項目を追加することを推奨します。

  • [ ] 作家名・作品名の指定禁止: 「〇〇風」といった特定の個人名(存命中または保護期間内の作家)を含めることを禁止する。代わりに「水彩画調」「油絵風」「サイバーパンク風」「フラットデザイン」など、一般的なスタイル用語で指示するルールにする。
  • [ ] 「i2i(画像から画像生成)」の制限: ネットで拾った他人の画像をAIに読み込ませて、「これに似た画像を作って」と指示する行為は、依拠性が認められやすいため原則禁止にする。
  • [ ] 生成AIツールの選定基準: どのAIツールを使っても良いわけではない。「Adobe Firefly」や「Getty ImagesのAI」のように、権利関係がクリアな学習データのみを使っている商用利用特化型AIツールの導入を優先検討する。

2. 生成物の類似性チェック(人間による確認)

AIで作ったものをそのまま世に出さないフローを構築します。

  • [ ] 画像検索にかける: 生成された画像をGoogleレンズなどの画像検索にかけ、酷似した既存作品がないか確認する。もし激似の作品が見つかったら、その生成物は破棄する。
  • [ ] 権利の所在不明なものは使わない: 自信を持って「これはオリジナルです」と言えない生成物は、対外的な広告や製品パッケージには使用しない。プレゼン資料の挿絵程度に留める。

3. 学習データの透明性確保

  • [ ] 自社データの活用: 最も安全かつ効果的なのは、自社が過去に制作した(権利を持っている)クリエイティブをAIに学習させることです。これなら著作権問題は発生しませんし、自社ブランドのトンマナを統一する強力な武器になります。

まとめ:技術と倫理のバランス感覚を

「作風」と「著作権」の境界線について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 少し複雑な話もありましたが、持ち帰っていただきたいポイントは以下の3点です。

  1. 法律の限界: 「作風」自体は保護されないが、「特定作品への依拠・類似」があるとNG。境界線は非常に曖昧。
  2. プロンプトの罠: 作家名を入れて生成するのは、「私は真似しました」と宣言するようなもの。リスク管理上、絶対に避けるべき。
  3. 炎上の恐怖: 「法的にセーフ」でも、社会的に許されるとは限らない。クリエイターへのリスペクトを欠いた運用は、ブランドを毀損する。

AIは素晴らしい「副操縦士」ですが、ハンドルを握っているのは私たち人間です。「法律の穴を突いてやろう」とするのではなく、「新しい技術を使って、誰にも迷惑をかけずに新しい価値を作るにはどうすればいいか?」を考える。そんな倫理観(モラル)こそが、結果として企業を守り、持続可能なDXを成功させる最大の防御壁になるはずです。

もし、「うちの会社のガイドライン、今のままで大丈夫かな?」と不安になったら、まずは法務部門と連携し、プロンプトの入力ルールを見直すことから始めてみてください。それが、安全な航海への第一歩です。

引用元

Yahoo!ニュース「AIが真似るのは“作品”か“作風”か 生成AI時代の著作権侵害の境界線」

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