
なぜ、会社でAIを導入しても思うように成果を出せないのか。
単なるツールの導入ではなく、「実務にどう組み込み、組織全体に浸透させるか」が最大の壁になっています。
この疑問に答えてくれるのが、株式会社BuzzConnection/株式会社KAGEMUSHA 代表取締役の 本城賢人さん。
BuzzConnection社/KAGEMUSHA社は、AI業務コンサルティングからAI教育/内製化支援まで幅広くAI事業を展開する企業です。
本城さん自身、社内外の現場で業務設計からデータ基盤構築、分析ロジックの作成まで徹底検証を重ねてきた実践者。その知見は、自社メディア「BuzzAIMedia」でも日々発信されています。BuzzAIMediaは生成AIの最新トレンドや実践ノウハウを扱い、月間3万PVを超える注目メディアです。
今回は、本城さんにAI導入の背景から具体的なツール活用、社内展開の工夫まで伺いました。
社内外でのAI活用は、データベース設計と分析ロジックの構築から
——まず、現在どんな業務でAIを活用されているか、ざっくり教えていただけますか?
そうですね。うちは社内だけでなく、お客さまへのAIツール導入支援も行っているので、活用の範囲はかなり広いです。まず多いのは「活用できる土台づくり」から入るケースですね。具体的には、商談や会議を必ず録音・文字起こしして残し、それをドライブやカレンダー、データベース、Notionなどに整理・蓄積します。
そのうえで、①どんなデータをどこに蓄積するかという設計、②そのデータからどんなアウトプットを導くかというロジック構築、この二本柱で運用しています。
事例でいうと、人材紹介では面談データと選考結果を紐づけて分析し、次の候補者の合格可能性を予測する支援を実施しています。営業では商談の録音を解析し、トーク内容を評価する仕組みを構築中です。さらに自社メディアでは、SEO記事の制作においてマーケターの視点をロジック化してAIに落とし込み、企画・構成・調査の工数削減を進めています。
ですので、AIを単なる便利ツールとして扱うのではなく、目的から逆算した上で、業務プロセスや分析ロジックに組み込む形で活用している、というイメージですね。
AIは“とりあえず”では機能しない──必要なのは課題意識と設計力である。
——AIを導入しようと思った背景や、業務上のどんな課題感がきっかけだったのでしょうか?
もともと社内でもお客さま向けでも「AIをどう活用していくか」という構想は常にありました。ただ、3年ほど前まではモデルの精度が業務に使えるレベルではなかったので、まずは検証を重ねてきた、というのが実際のところです。
課題感としては、単に効率化したいとか工数を減らしたいという話ではなく、「どの業務をAIに任せられるのか」「逆にどの部分は人でなければならないのか」をしっかり見極めたかったんです。ここを外してしまうと、結局うまく活用できないので。
また、AIは「とりあえず使ってみよう」という温度感では機能しないという実感もありました。だからこそ、まず目的を明確に定め、業務全体を俯瞰した上で「どのプロセスをAIに任せるのか」を設計する必要があると考えていました。
——その課題はどれくらい前からあり、どのような影響が出ていたのでしょう?
少なくともこの3年ほどは、課題として強く認識していました。構想自体はそれ以前からありましたが、当時はモデルの出力品質が実運用に耐えにくく、社内で活用できるかどうかの検証を継続していた状況です。
具体的な影響としては、メディア運営では企画・構成・調査やSEO観点でのチェックに多くの工数がかかっていたこと。営業や人材領域では、商談や面談の履歴をデータとして横断的に活用できる仕組みがなく、評価や候補者の合格可能性の見立てにつなげにくかったことが挙げられます。
さらに、「とりあえず使ってみる」といったレベル感では効果がすぐに頭打ちになる、ということも分かりました。そこで私たちは、AI活用を本格化させるために 目的の明確化、データ基盤の設計、出力ロジックの整備 を不可欠だと考えるようになりました。
そして近年、モデルの性能が大きく向上したことを受け、これまでの検証で積み上げてきた設計を土台に、実装に踏み切ることができました。
用途に応じたツールの使い分けで、業務効率を大幅改善
——実際に使っているAIツールを教えてください
日常のやり取りやアイデア出しはChatGPT、長文やGoogle連携は主に Google AI Studio(Gemini)側で対応することが多いです(標準のGeminiチャットは用途限定)。コーディング周りはClaudeを中心に、GAS(Google Apps Script)や簡単なスクリプトの作成・調整で活用しています。業務の自動化はn8n/Dify/Make、そしてGASなど、案件や要件に合わせて使い分けています。デザインや資料作成ではGenspark、Felo、Figma、ほかスライド生成系のツールも併用しています。リサーチについては、ディープリサーチ機能やWebスクレイピングができるGensparkなどを使い、収集した情報をデータベースに蓄積して活用しています。
——そのツールを使って、どんな風に業務が変わったと感じますか?
最も分かりやすい事例はメディア運営です。企画・構成・調査といった上流工程の工数を約50〜60%削減できました。さらに、SEOの観点をロジック化してAIに落とし込んだことで、記事をゼロから立ち上げる作業はほぼ不要になりました。
営業では、商談の録音を解析し、トーク内容の評価や振り返りのアウトプットを自動生成できるようになりました。その結果、属人化の是正と再現性の向上につながっています。
人材領域では、面談データと選考結果を紐づけて分析することで、新規候補者の合格可能性を見立てられるようになりました。
こうした取り組みの積み重ねにより、社内の定例ミーティングでの情報共有が活発になり、職種を越えて活用知見が循環。その結果、導入のスピードも加速しています。直近ではモデルの性能向上もあり、既存の業務フローを大きく変えずに出力品質を高められる実感を得ています。
——数ある中でなぜそのツールを選ばれたのでしょうか?
選定基準は「何のために使うのか」を起点に、データ基盤と出力ロジックに合うかどうかです。特定のツールに固執せず、案件や組織に合ったものを検証して決めています。例えば、日常のやり取りや企画づくりはChatGPTで用途ごとに分けて使うと出力の切り替えがしやすい一方、長文出力はGoogle AI Studio(Gemini)のほうが向いているので使い分けています。GeminiはGoogle連携が強く、タイマー設定による定期レポート配信やカレンダー等との連携ができる点も採用理由です。コーディングはClaudeが最も扱いやすく、GASや簡易スクリプトの作成・調整で成果が出ているため中心にしています。
情報共有が社内AI活用のカギ。部署を超えた連携が浸透を後押し
——社内でAIを使い始める際、スムーズに活用は進みましたか?
最初からスムーズに進んだわけではありません。この3年ほどは徹底的に検証を重ね、本当に使えるのかどうかを見極めてきました。当時はモデルの出力品質が実務レベルに達していない場面も多く、導入は段階的に進めざるを得ませんでした。
一方で、直近ではモデルの性能が向上したことで、これまでに組み上げてきた設計(データの残し方や出力ロジック)を大きく変えることなく、活用の質を高められるようになり、運用は一気に加速しました。
もちろん、メールの下書きや簡単なリサーチといったスポット的な用途は当初からすぐに使えました。しかし、より深い業務への適用には「目的の明確化」と「土台作り」が前提として必要であり、そのうえで慎重に進めてきた、というのが実態です。
——何か工夫されたポイントはありますか?
はい。まず全員で「何のためにAIを使うのか」を合意し、商談や面談の録音・文字起こしを必ず残してドライブやカレンダー、Notionなどに蓄積する“土台づくり”を徹底しました。
次に、業務を細かいタスク単位に分解し、「人が担うべきこと」と「AIで代替・自動化できること」を仕分け。そのうえで、データ基盤の設計と出力ロジックの構築という二本柱を整えています。
浸透面では、社内ミーティングで活用事例や「できた/できなかった」を共有するような環境を整えました。その結果、エンジニア・マーケター・セールスそれぞれに“相互メリット”が返る状態ができています。モチベーション管理の観点でも、「できた/できなかった」を見える化することで、再現性のある手法を社内標準として定着させてきました。
ツールについては、あくまで目的起点で適材適所に選定。モデルが進化した場合も、既存フローを大きく変えずに差し替え、品質のみを高める方針を取っています。また、AIですべてを置き換えられるわけではないという前提に立ち、泥臭い要件定義を丁寧に行うことも重視しています。
メディア上流工数を50〜60%削減。戦略・創造業務へシフト
——AI導入によって、どんな成果や変化がありましたか?
メディア運営では、企画・構成・調査といった上流の工数を50〜60%削減でき、SEO観点をロジック化してAIに落とし込んだ結果、記事を0→1で立ち上げる作業はほぼ100%なくなりました。
営業では、商談の録音を解析してトーク内容を評価・可視化できるようになり、属人化の是正と再現性の向上につながっています。人材領域では、面談データと選考結果を紐づけて分析し、新規候補者の合格可能性を見立てる運用が可能になりました。
全社的にも、定例ミーティングでの職種横断の情報共有が活発になり、直近のモデル性能向上も相まって、既存フローを大きく変えずに出力品質を底上げできるようになった実感があります。
AIは魔法ではない。“AX”実現のために、業務理解と設計力が鍵
——今後、AI活用をどのように広げていきたいと考えていますか?
今後も「何のために使うのか」を起点に、商談や面談の録音・文字起こしをデータとして残す“土台づくり”を徹底し、データ基盤の設計と出力ロジックの二本柱で横展開していきたいと考えています。
マーケティングだけでなく、営業・人材・開発・バックオフィス、ECなど各領域ごとに業務を細かく分解し、人が担う部分とAIで自動化できる部分を仕分けて適用範囲を広げます。
一方で、AIがすべてを置き換えるわけではありません。DXの延長線上にある“AX”として捉え、泥臭い要件定義や検証を新規事業のように積み重ねる姿勢が不可欠です。モデルが進化したときは、「既存フローを大きく変えずに差し替えて品質だけを上げる」この現実的な向き合い方を組織全体で共有していくべきだと考えています。
AI導入は“新規事業”と同じ。諦めず、目的を見失わずに取り組むことが大切
——これからAI活用に踏み出そうとしている企業・チームに向けて、何かアドバイスやメッセージがあればお願いします
一番伝えたいのは「諦めないこと」ですね。AIの導入って、一足飛びにうまくいくものじゃなくて、検証に検証を重ねながら、自分たちの業務やフローに合った形を見つけていく必要があります。感覚的には、新規事業を立ち上げるのに近いです。
それと、AIにやってほしいことをただ丸投げするんじゃなくて、「なぜ使うのか」「どこを任せるのか」っていう要件をちゃんと定義することがすごく大事です。正直そこは泥臭い作業ですけど、最終的な成果につながるし、導入が成功するかどうかの分かれ目になると思ってます。
要は「AIが全部解決してくれる」っていう魔法みたいなイメージじゃなくて、「AIはあくまで手段で、それを活かせるかどうかは使う側次第」という意識を持って取り組むことが、成功の鍵になると感じています。
まとめ
BuzzAIMediaは、業界最先端のAIトレンド、独自の分析、生成AIの業務活用術までを網羅的に発信するメディアです。月間3万PV以上を誇り、現場の実務に直結する価値ある情報を提供しています。最新のAIニュースや活用事例、プロンプトの具体例などを知りたい方は、ぜひご覧ください。
URL:https://media.buzzconne.jp/
株式会社BuzzConnectionについて
社名:株式会社BuzzConnection
設立:2021年9月
代表取締役:本城賢人
事業内容:
- メディア運営(BuzzAIMedia)・メディア制作支援
- SNS運用代行
- 生成AI活用研修 など他多数
会社URL:https://buzzconne.jp/
株式会社KAGEMUSHAについて
社名:株式会社KAGEMUSHA
設立:2023年4月
代表取締役:本城賢人
事業内容:
- AI業務コンサルティング
- 業務プロセスAI化設計
- AI導入コンサルティング
- AI教育/内製化支援
会社URL:https://kagemusha.ai/