
近年、データ活用の重要性が増していますが、多くの企業がその活用に苦戦しています。コリニア株式会社は、企業のデータ活用を支援するコンサルティング事業を展開する中で、多くの企業のデータを持ちながらも活用できていないという課題を解決してきました。pythonやSQLを操れる人材や統計学などの知識もさることながら、そもそもビジネスの文脈においてどのようにデータが活用できるか、といった知識の不足や従来のBIツールの複雑さが大きな障壁となっていたのです。
これらの課題を解決し、誰もが簡単にデータ分析を行える環境を実現するために誕生したのが「autoBI」です。
今回は、コリニア社を共同創業しCDOとしてデータ戦略の立案を主導する、株式会社コリニア CDOの高橋聖さんと江浦あずささんにお話を伺いました。
本記事では、その開発背景や技術革新、そして企業にもたらす変革について詳しく紹介します。
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autoBIの誕生 コンサルティングからツール開発へ
—— まず、コリニア株式会社はどのような背景からautoBIの開発に至ったのでしょうか?
高橋 コリニア株式会社はもともと、企業のデータ活用を支援するコンサルティング事業を中心に展開していました。私たちは様々な企業のデータ分析や業務改善をサポートしてきましたが、現場で耳にする課題には、いくつかの共通点がありました。
一つは、「データを活用したいが、専門知識がなく活用できない」という声です。多くの企業はデータを蓄積しているものの、それを実際の意思決定に活かすまでに至らないことが多くありました。また、データサイエンスの専門家が社内にいる企業は限られ、ビジネス部門の担当者が自らデータを分析し、価値を引き出すのはハードルが高いという状況でした。
もう一つは、「データ分析ツールのハードルが高く、導入しても使いこなせない」という課題です。従来のBIツールやデータ分析ツールは専門知識が必要で、使いこなせるのは一部のデータサイエンティストやIT部門の担当者に限られていました。そのため、ツールを導入しても活用が進まず、最終的に形骸化してしまうケースが少なくなかったのです。
こうした課題を解決するため、データ活用をより簡単に、誰でも専門知識なしで使えるツールが必要だと考えるようになりました。そこで、「データ活用の社会浸透」 を目指し、コンサルティング事業の知見を活かして開発したのがautoBIです。
—— autoBIの開発にあたり、どのような技術の進化が影響しましたか?
高橋 autoBIの構想は以前からありましたが、一般のビジネスパーソンが活用するツールとしての実現ハードルは高く、それを打破することができた要因が生成AIの進化でした。以前は、データ分析を行うためには、SQLやPythonなどのプログラミング言語の知識も然ることながら、ビジネス課題のデータ分析問題への変換や分析結果のビジネス上の解釈などの知識と経験が必須でした。しかし、ChatGPTをはじめとする生成AIが進化したことで、ビジネス言語のやりとりによるデータ分析の可能性が広がりました。
つまり、データ分析をする際に「売上が下がった原因を教えて」といったビジネスの言葉で質問し、それに対してシステムが適切なデータ分析を自動で行い、結果を提示する仕組みを開発できるようになったということです。その発想がまさに、「autoBI」であり、「自然言語で操作ができるデータ活用ツール」の実現に繋がったと考えています。
autoBIとは? 誰でも使える高度なBIツール
—— autoBIは、具体的にどのような課題を解決するツールなのでしょうか?
高橋 autoBIは、データ分析の専門知識がなくても、専門知識なしでデータを活用できるツール です。従来のデータ分析は、SQLやPythonなどのプログラミング言語やデータ活用に関する知識、あるいは結果を解釈してビジネスに適用するための知識が必要だったため、分析できるのは限られた専門家に限られていました。しかし、autoBIは自然言語を使った対話型のインターフェースを採用しており、データの知識がないビジネスユーザーでも簡単に活用できるのが特徴です。
たとえば、ECサイトを運営している企業で「最近の売上の傾向はどうなっている?」と入力すれば、autoBIが自動でデータを分析し、売上の推移や影響要因を可視化します。さらに、「売上低下の要因を詳しく分析して」と指示すれば、関連データを抽出し、広告費の増減や特定商品の売れ行きの変化など、具体的な要因を提示してくれます。
——従来のBIツールとの違いは何でしょうか?
江浦 既存のBIツールとしては、「Power BI」や「Tableau」といったツールが広く使われています。しかし、これらのツールは事前のデータ準備やダッシュボードの作成に手間がかかるため、活用には一定のスキルが必要でした。autoBIの最大の違いは、データ分析を自動化し、専門知識がなくてもすぐに使える点にあります。
たとえば、autoBIでは自然言語でのデータ分析が可能です。「売上が下がった原因を知りたい」と入力するだけで、システムが適切なデータを自動で抽出し、分析結果を提示します。従来のデータ分析ツールやBIツールでは、データ構造や分析手法を理解し、適切な指標を選定して適切な可視化方法を指定しなければなりませんでしたが、autoBIならそうしたプロセスを省略し、誰でも簡単にデータ活用ができるようになります。
また、自動的に適切な分析方法を提案する機能も備えています。たとえば、「どのキャンペーンが売上に貢献したか」を知りたい場合、autoBIが統計手法や機械学習を自動適用し、最適な分析結果を出力します。ユーザーが手動でモデルを選択する必要はなく、システムが適切な手法を判断してくれるため、データ分析に不慣れな人でも精度の高いインサイトを得ることができます。
さらに、データ準備の手間を削減できるのも大きな特徴です。通常、BIツールを活用するには、データのクレンジングや加工が必要ですが、autoBIではこれらの工程を自動化しています。ユーザーはデータの整備を意識せずに、必要な分析をすぐに実行できるため、分析作業にかかる時間を大幅に削減できます。
加えて、レポート作成の自動化にも対応しています。企業では定期的にデータを分析し、報告書を作成する業務が発生しますが、autoBIならデータを可視化したレポートをワンクリックで生成できます。手作業でグラフを作成したり、分析結果を整理する手間が省けるため、業務効率の向上にもつながります。
——初心者でも簡単に使える設計になっているということですね?
高橋 はい。autoBIは、データサイエンスの専門家だけでなく、現場のビジネス担当者が自らデータを活用できるツールとして開発しました。データ分析をより多くの人が手軽にできるようになれば、企業の意思決定のスピードも向上しますし、ビジネスの成長にも大きく寄与するはずです。
導入企業の成功事例 autoBIで業務がどう変わるか
—— autoBIを導入した企業では、どのような変化がありましたか?
江浦 autoBIを導入した企業では、「データ活用が劇的にスムーズになった」という声を多くいただいています。特に、EC業界や小売業など、大量のデータを扱う企業での効果が顕著です。
たとえば、EC企業の事例 では、これまで売上や広告費の分析を行う際に、データをExcelに手動で取り込み、関数を駆使してレポートを作成するという手間がかかっていました。これには多くの時間が必要で、さらに分析スキルを持つ担当者に業務が依存してしまうという課題もありました。
autoBIを導入したことで、これらの業務がほぼ自動化されました。データの取り込みから分析、レポートの作成までが一貫して行えるため、作業時間が大幅に削減されただけでなく、「誰でもデータを活用できる環境」が整いました。
—— データの活用によって、小売業やその他の業界では、どのような効果がありますか?
高橋 たとえば、我々コリニアでは、ある地方の食品販売会社において、主力商品であるお弁当の仕入れや販売予測のサポートをさせていただいたことがあります。
以前は、各店舗の店長が経験に基づいて発注を行っていましたが、各店長が経験と感覚で発注を行っていたため、過剰在庫や欠品が多くなることもある状態でした。特に、日ごとの来客数や天候、イベントの影響など、店舗ごとに異なる要因を考慮しながら最適な発注数を決めるのは非常に難しく、結果として売り切れが発生したり、逆に余剰在庫が生まれて廃棄が出てしまうことが多かったそうです。
先方の販売データや弊社で取得したデータをつなぎ合わせた予測モデルを導入したことで、過去の販売データや天候、イベント情報などをもとに、適切な発注量をAIが自動提案する仕組みを構築しました。これにより、店長はデータをもとに発注を決定することができるようになり、業務の負担が大幅に軽減されました。
これまで勘に頼っていた発注がデータに基づくものになったことで、より正確な発注業務がより少ない負担で可能になったのです。
さらに、店舗ごとに異なる販売傾向をデータで可視化できるようになったことで、本部側でもより精度の高い戦略を立てやすくなりました。たとえば、ある地域では特定の曜日に弁当がよく売れる傾向がある一方で、別の地域ではイベントの前後で売上が大きく変動するといった違いがデータとして明確になりました。これにより、各店舗の特性に合わせた販促施策を打ちやすくなり、店舗全体の収益性向上にもつながっています。
—— autoBI導入によって、企業のデータリテラシーに変化はありましたか?
高橋 はい、大きく変化しました。以前は、「データはあるけど、どう活用すればいいかわからない」という企業が多かったのですが、autoBIを導入したことで、データを分析して意思決定を行う文化が社内に浸透し始めています。
これまでは、経験や直感に頼っていた業務が多く、データを活用することに対してハードルの高さを感じる企業が少なくありませんでした。しかし、autoBIの導入によって「とりあえずデータを見てみよう」「数値をもとに考えてみよう」という姿勢が生まれ、データを基に施策を考える習慣が自然と定着してきています。
特に、現場の担当者がデータに基づいて行動できるようになったことは、大きな価値だと考えています。たとえば、これまで店長が「なんとなく今日は売れる気がする」といった感覚で発注していたものが、「昨日と同じ条件ならこのくらい売れるはずだ」と具体的な根拠を持って判断できるようになった。これにより、現場での意思決定の精度が向上し、結果として売上や利益の改善につながっています。
データ活用というと、どうしても専門的な知識が必要だと考えられがちですが、実際には「データを見て考える習慣」をつけることが第一歩になります。autoBIは、その習慣を自然に身につけられる環境を提供することで、企業のデータリテラシー向上にも大きく貢献していると感じています。
データ活用の課題 なぜBIツールが必要なのか?
—— 企業がデータを活用する際に直面する課題とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
高橋 多くの企業が「データを持っているが、うまく活用できていない」という課題を抱えています。データを収集すること自体は簡単になりましたが、それを有効に活用できる企業はまだ限られています。その原因として、大きく三つのポイントが挙げられます。
まず一つ目は、データ分析の専門知識が必要で、扱える人が限られることです。BIツールを導入しても、実際に活用するにはSQLや統計の知識が求められる場合が多く、現場の担当者が自分でデータを分析し、意思決定に活かすのは難しいのが現状です。
その結果、データ分析はデータサイエンティストや一部のIT部門の担当者に任せることになり、業務が一部の人に集中してしまいます。企業全体でデータを活用する体制を整えたくても、分析を担当できる人材が限られているため、データドリブンな意思決定が進みにくいのです。
次に、データ分析のプロセスが複雑で、時間がかかることも大きな課題です。データの取得、整理、分析、レポート作成といった工程を手作業で行うと、それだけで膨大な時間がかかります。
特に、企業のデータは複数のシステムに分散していることが多いため、まずはデータを統合し、必要な情報を抽出するだけでも大きな手間が発生します。さらに、分析に必要な前処理を行い、最終的にレポートとしてまとめるまでに時間がかかるため、せっかくのデータが活用される前に陳腐化してしまうこともあります。
意思決定のスピードが求められる現代のビジネス環境において、このプロセスの複雑さは企業の成長を阻害する要因になっています。
最後に、データを見ても、どのように活用すればいいのか分からないという問題があります。企業の中には、売上データや在庫データなどを蓄積しているものの、どの指標を重視すればよいのかが分からず、データがただの数字の羅列になってしまっているケースが多く見られます。
たとえば、売上が前年同月比で下がっていたとしても、それがどの施策の影響なのか、何が要因なのかを把握するのは容易ではありません。「データを見ても、具体的なアクションに結びつけられない」という課題を抱える企業は少なくなく、データ活用の意義を見出せないまま、形だけのBIツール導入にとどまってしまうこともあります。
—— こうした課題を解決するために、autoBIはどのように役立つのでしょうか?
高橋 autoBIの強みは、「データ分析を専門知識なしで、誰でも簡単に実行できる」ことです。例えば、従来のBIツールでは「どの指標を見ればいいのか?」ということを事前に理解しておく必要がありました。しかし、autoBIは「売上が下がった要因は何?」といったシンプルな問いを投げかけるだけで、適切なデータを自動的に分析し、解決のヒントを提示してくれます。
また、autoBIは「データ活用のサジェスト機能」を備えています。たとえば、ECサイトの売上データを分析した際、「特定の商品が特定の曜日に売れやすい傾向がある」といった気づきを自動で通知してくれるのです。これにより、データ分析の知識がない担当者でも、データから重要なインサイトを得ることができます。
—— では、まだデータ活用が進んでいない企業に対して、どのようなアドバイスをしますか?
高橋 まずは「データ活用のハードルを下げること」が重要です。多くの企業は「データ分析は専門家がやるもの」と考えがちですが、現場の担当者がデータを使いこなせる環境を整えることが、競争力強化につながります。
autoBIのようなツールを導入すれば、データサイエンスの知識がなくても、必要な分析をスムーズに行うことが可能です。まずは、現場の社員が日々の業務の中で簡単にデータを活用できるような環境を作ることが、企業の成長にとって大きな意味を持つと考えています。
autoBIの未来 さらなる進化と海外展開
—— autoBIは今後、どのような進化を遂げていくのでしょうか?
高橋 autoBIは現在、多くの企業に導入され始めていますが、まだ発展途上のプロダクトです。私たちは、データ活用をより多くの企業に浸透させるために、機能の改善や新たな領域への拡張を進めています。
これまでの開発を通じて、データ分析のハードルを下げることが重要だと実感していますが、まだ解決すべき課題は多くあります。そのため、今後はユーザーの実際の業務フローにより密接に組み込めるような機能を拡充していく予定です。
例えば、autoBIをさらに使いやすくするために、より高度な自動分析機能の開発を進めています。現在のautoBIは、ユーザーの入力に応じて適切な分析を行う仕組みですが、将来的にはユーザーが何を知りたいのかをシステムが予測し、より積極的にインサイトを提示できるようにしたいと考えています。
企業のデータを日常的にモニタリングし、重要な変化が起こった際にリアルタイムで通知する機能や、業界ごとのベストプラクティスを学習して最適なデータ活用方法を提案する機能なども検討しています。
また、データ活用を推進する上で、多くの企業が直面する「データの統合」や「異なるシステム間の連携」といった課題にも対応していきます。企業のデータは、異なる部署やシステムに分散していることが多いため、それらをシームレスにつなぎ、統一的に分析できる環境を提供することが重要だと考えています。そのため、APIの拡張や他の業務ツールとの連携強化を進め、より多くの企業が活用しやすい形を目指していきます。
—— 今後の展望として、海外展開も視野に入れているのでしょうか?
高橋 はい、海外展開も積極的に進めていきたいと考えています。現在、日本国内ではデータ活用の重要性が広まりつつありますが、まだまだ発展の余地があります。一方、海外ではすでにデータドリブンな意思決定が標準化されている市場も多く、autoBIのようなツールに対する需要も高いと考えています。
特に、北米やヨーロッパでは、企業のデータ活用が経営の中心に組み込まれており、その中でautoBIのような「誰でも使えるBIツール」は大きな価値を提供できると確信しています。
海外市場に進出するためには、言語対応だけでなく、各国の企業文化やデータ活用の成熟度に合わせたローカライズが不可欠です。そこで、現地のパートナー企業との連携を視野に入れながら、autoBIのグローバル展開に向けた準備を進めています。今後は、海外の展示会やカンファレンスにも積極的に参加し、より多くの企業にautoBIを知ってもらう機会を作っていきたいと考えています。
autoBIは、単なるデータ分析ツールではなく、企業の意思決定を支えるインフラとして成長させていきたいと考えています。データを活用することが当たり前になる時代に向けて、autoBIがその中心的な役割を果たせるよう、引き続き進化を続けていきます。
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