
近年、グローバル化が進み、企業や個人が言語の壁を越えて情報を発信する必要性が高まっています。そんな中、AIを活用した動画翻訳サービス「こんにちハロー」が注目を集めています。
本インタビューでは、サービスの特徴や競争優位性、導入企業の成功事例、今後の展望について執行役員CSO 早見 泰星さんに詳しく伺いました。AIの可能性と未来に向けたビジョンをぜひご覧ください。
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多言語対応の壁を突破する「こんにちハロー」 — AIを活用した動画翻訳サービス
—— こんにちハローさんのツールを一言で表現すると、どういった職種や課題をAIで解決するツールなのか、お聞かせいただけますか?
「こんにちハロー」は、AIを活用した動画の翻訳・吹き替えサービスです。
具体的には、動画を一つ納品していただければ、AIがその動画を最大37カ国語に翻訳し、話者がまるでその言語を話しているような動画を作成することができます。インバウンド需要が高まる中、観光業、飲食業、エンターテイメント業界をはじめ、幅広い業種で活用されています。
特に、外国人観光客への対応が求められる旅館や飲食店、また海外展開を目指す企業にとって、言語の壁を超える手段として有効です。また、アニメや映画などのIPコンテンツを海外市場に適応させる際にも活用されています。
—— その上で、競合他社と比較した自社の強みや独自性についてもお伺いしてもよろしいでしょうか?
最大の強みは、『話者の声を保ったまま翻訳できる』という点と、『唇の動きまで自然に変えられる』技術です。

一般的な翻訳・吹き替えサービスでは、字幕をつけるか、別の声優が吹き替える形になります。しかし、こんにちハローは、AIを活用して話者本人の声を保持したまま、自然な発音で別の言語に変換できます。さらに、話者の唇の動きも翻訳後の言語に合わせて調整しているため、「まるでその人がその言語を話しているように見える」高い再現性を実現しています。
字幕や従来の吹き替えでは伝わりにくかった話者の抑揚やキャラクター性もそのまま残るため、より説得力のあるコンテンツとして活用できます。これにより、他社にはない「没入感の高い多言語対応」が可能になっています。
AI技術で精度90%を実現 —「こんにちハロー」の動画翻訳の仕組み
—— こんにちハローでは、動画生成にAIを活用されているとのことですが、その精度は90%と伺いました。この90%の精度をさらに完璧に近づけるために、どのような工夫をされているのでしょうか?
AIの精度向上には、最新技術の組み合わせと人の手による補正が不可欠です。
こんにちハローは、音声認識、翻訳、音声合成、リップシンク(唇の動きの同期)など様々な工程でAIを活用し、動画を生成しています。
それぞれのAIには得意分野があり、例えばリップシンクに強いAI、複数話者の認識に優れたAI、日本語と英語の発音が自然になるAIなどを用途ごとに使い分けています。

ただし、AIだけでは100%の精度にはなりません。例えば、固有名詞や同音異義語はAIだけでは翻訳できないため、商業利用するには難しいクオリティになってしまうことがあります。そのため、AIによる翻訳後に「人の手を加えて補正する」工程を取り入れています。
具体的には、テキスト翻訳の修正、音声のイントネーション調整、リップシンクの微調整を、各言語のネイティブが監修することで、最終的に限りなく100%に近い品質に仕上げています。この「AI × 人」のハイブリッドアプローチが、こんにちハローの動画生成技術の精度を高める鍵となっています。
競争優位性の鍵は「AIソムリエ」 — 変化するAI技術への適応力
—— AI技術は日々進化していますが、その中でこんにちハローが競争優位性を持ち続けるために、どのような取り組みをされていますか?
AIの進化は驚くほど速く、特定の技術に依存するのは非常にリスクが高いです。そこで、僕らは“AIソムリエ”として最適な技術を組み合わせることを強みにしています。
こんにちハローでは、特定のAIに固執せず、常に最新の技術を取り入れる体制を整えています。現在も15種類以上のAIを用途に応じて組み合わせており、それぞれの長所を活かして最適な結果を生み出しています。
また、アメリカにいる代表取締役の弟が、現地で最新のAI技術をキャッチアップし、すぐに社内に共有できる体制を整えています。これにより、海外の最先端AIをいち早く検証し、実際のサービスに落とし込むことが可能になっています。
さらに、単なる技術導入にとどまらず、「どの用途にどのAIを使えば最も自然な動画が作れるか」というノウハウを蓄積している点も大きな強みです。この柔軟なアプローチによって、最新のAIが登場しても迅速に対応でき、常に競争優位性を維持できる体制を築いています。
導入企業の声が証明する「こんにちハロー」の効果 — 成功事例と実績
—— 実際にこんにちハローを導入された企業は、どのような点に魅力を感じて導入を決めたのでしょうか? また、導入後にどのような変化や成果がありましたか?
導入の決め手として多いのは、『低コストで高品質な多言語対応ができること』と『話者のキャラクター性を保てること』ですね。
例えば、ある蕎麦屋さんでは、外国人観光客がラーメン屋だと思って入店したら、蕎麦が出てきてクレームが入ったり、昼からお酒を飲めるお店なんですが、その雰囲気を理解してもらうのって難しいんですよね。
そこで、店主がお店の歴史やこだわりを話した動画を多言語化し、その動画をGoogleマップに掲載しました。その結果、半年間で外国人客の来店数が50%増加し、売上向上にもつながりました。
参考:店主の想いを伝えてインバウンド対策。築地の名店・手打ちそばの「築地さらしなの里」。こんにちハローUser第一号
また、大手化粧品メーカーでは、英語を話せる社員はいるものの、商品の魅力を的確に伝えることができるトップ販売員の商品紹介動画を多言語化したいという要望がありました。A/Bテストの結果、英語を話せる社員が説明するよりも、熟練の販売員の話し方をAIで再現した動画の方が売上に直結することが判明し、現在も継続的に活用されています。
グローバル企業の社内向けメッセージにも利用されています。CEOが多言語に対応したスピーチを行う際、吹き替えではなく本人の声と話し方を維持した動画を提供することで、社員の理解度と共感を高める効果が得られています。
1万円から始められる高品質翻訳 — 料金設定と短尺動画の戦略
—— こんにちハローの料金設定について拝見しましたが、長尺の動画ではなく、180秒などの短尺動画が多い印象を受けました。このような短尺動画をメインにしている背景についてお聞かせいただけますか?
僕らのサービスは、誰でも気軽に試せる価格設定を大切にしています。そのため、30秒/1万円という手頃な料金体系を維持しています。
もともと、こんにちハローは、飲食店や旅館などの個人経営者にも使ってもらえるように開発されたサービスです。例えば、町の蕎麦屋さんが「外国人観光客に店の魅力を伝えたい」と考えたとき、何十万円もかかるプロの吹き替えサービスは手が届きにくいですよね。そこで、「まずは1本試してもらえる」価格設定にすることで、より多くの事業者に利用してもらえるようにしました。
短尺動画が中心になっているのも、導入のハードルを下げるためです。企業のプロモーションや商品紹介において、長尺の動画は制作コストも視聴者の負担も大きくなりがちです。しかし、30秒から3分程度の短尺動画なら、簡潔にメッセージを伝えられ、SNSや店頭モニターなどでも活用しやすくなります。
実際に、こんにちハローを導入した企業の多くが、「短い動画でも十分に訴求効果がある」と評価しています。たった30秒の動画でも、外国人観光客への情報提供や、商品の魅力を伝えるツールとして大きな成果を生み出せるのです。
また、大手企業でも、年間契約を結び、定期的に短尺動画を制作しているケースが増えています。特に化粧品業界などでは、商品の発売ごとに新しいプロモーション動画を作成するニーズが高く、こうした短尺動画の柔軟性が評価されています。
初心者でも簡単に使える「こんにちハロー」 — 動画制作のハードルを下げる工夫
—— こんにちハローは、動画を持っているかどうか、また撮影経験の有無によってユーザーの状況が異なると思います。初めて動画を作る方でも導入しやすいように、どのような工夫をされていますか?
動画制作に慣れていない方でも簡単に使えるように、フォーマットの提供やサポートを充実させています。
例えば、飲食店や個人事業主の方が初めて動画を作る際、「何をどのように話せばいいのか分からない」という声が多くあります。そのため、こんにちハローでは、事前に「お店の紹介」「おすすめ商品の説明」など、業種ごとに適した動画のフォーマットを用意し、利用者がスムーズに撮影できるようにサポートしています。
また、動画撮影が苦手な方のために、簡単なガイドラインを提供し、「どのようなアングルで撮ればよいか」「どのくらいの長さが適切か」などのアドバイスを行っています。こうすることで、撮影経験がなくても、ある程度クオリティの高い動画を作ることが可能になります。
—— それでも動画撮影に抵抗がある方や、撮影環境が整っていない方もいるかと思います。そういった方へのサポート体制についても教えていただけますか?
初期の頃は、僕ら自身が現場に行って撮影のお手伝いをしていました。今でも、撮影に不安を感じる方には、積極的にアドバイスやフォローを行っています。
実際、こんにちハローの初期の頃には、直接店舗を訪れてサンプル動画を撮影することで、事業者の方々に動画制作のイメージを持ってもらう取り組みをしていました。現在はそこまで手を広げるのは難しいものの、利用者が自分で撮影しやすいように、簡単な動画作成のポイントを伝えることで、ハードルを下げる工夫を続けています。
また、大手企業やメディア関係者はすでに動画コンテンツを持っていることが多いため、こうしたユーザーはスムーズに導入できます。しかし、個人経営の店舗などでは動画を持っていないケースも多いため、今後さらに撮影サポートを充実させることで、より多くの方に利用してもらえるような仕組みを整えていく予定です。
言語の壁をなくし、日本の魅力を世界へ — こんにちハローの企業理念と役割
—— こんにちハローのツールが、御社のミッション・ビジョン・バリューと照らし合わせたときに、どのような意味を持つのでしょうか?
こんにちハローの最大のミッションは、言語の壁をなくし、日本の文化やビジネスを世界中に広めることです。
日本には、飲食、観光、エンターテインメントなど、世界に誇るべき文化や産業がたくさんあります。しかし、言語の壁によって、その魅力を十分に伝えられていないケースが多いのが現状です。特に観光業や飲食業では、外国人観光客とのコミュニケーションが課題となり、接客のハードルが高くなることが多いです。
こんにちハローは、そうした言語の壁をAI技術で取り払うことで、より多くの人が日本の文化やサービスにアクセスできるようにすることを目指しています。単なる翻訳ツールではなく、動画を通じて「話者の声や表情を自然に残したまま」別の言語で伝えられる点が、我々のサービスの大きな特徴です。

—— AIを活用することで、こんにちハローはどのようなポジショニングを築いていきたいと考えていますか?
僕らの目指すポジションは、“AIソムリエ”として最適な技術を組み合わせ、最高の多言語コンテンツを提供することです。
AI技術は日々進化しており、一つの技術に固執すると、すぐに時代遅れになってしまう可能性があります。そのため、こんにちハローでは常に最新の技術を取り入れ、用途に応じて最適なAIを選び、組み合わせることで、他社にはない高品質な翻訳動画を実現しています。
また、AIを活用した音声・動画の合成技術は、ネガティブな側面が取り上げられることもあります。しかし、こんにちハローは「正しく活用すれば、言語の壁をなくし、人々のコミュニケーションをより豊かにすることができる」という信念のもと、商業的にも意義のある使い方を推進していきたいと考えています。
AIの可能性を広げるために — こんにちハローが目指すもの
—— AI技術は日々進化していますが、こんにちハローとしては今後どのような未来を目指していきたいですか?
AIの力を正しく活用し、人々のコミュニケーションをより豊かにしていく未来を目指しています。
AI技術にはネガティブな側面も指摘されがちですが、僕らは「AIを正しく使えば、世界中の人々をつなげることができる」と考えています。
また、AI技術は進化が速いからこそ、特定の技術に固執せず、最適なものを選んで使いこなす「AIソムリエ」としての役割を果たしていきたいです。
AI技術の情報はまだ一部の人しかキャッチアップできていないのが現状です。もっと幅広い業種の方々にAIの可能性を知ってもらいたいです。
こんにちハローのようなAI技術を活用したツールは、飲食業や観光業など、従来あまりテクノロジーに関わってこなかった業界にも大きな影響を与えられるものです。しかし、現状では「AI=専門家向け」というイメージが強く、一般の事業者や個人経営者が「自分たちには関係ない」と思ってしまうケースが多いです。
「AIは誰でも活用できるツールであり、実際にこういう形で役立っている」という事例をもっと発信していきたいですね。特に、飲食店やホテル、地方の観光施設など、ITに詳しくない人たちにも届くような情報発信が重要だと思っています。

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