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2025年IT支出「9%増」の裏側:AIサーバー爆買いの影で、情シスが抱える3つの不安

2025年IT支出「9%増」の裏側:AIサーバー爆買いの影で、情シスが抱える3つの不安
2025年11月27日 16:282025年03月03日 13:42
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事業戦略
市場調査
IT戦略
企業動向
この記事でわかること
  • 2025年のIT市場の成長要因
  • 企業が直面するリスク要因
  • 今後のIT投資戦略のポイント
この記事の対象者
  • DXを推進したい企業経営者
  • IT投資の意思決定者
  • 最新のITトレンドを知りたいビジネスパーソン
効率化できる業務
  • 業務自動化:作業時間を最大30%削減
  • クラウド活用:ITコストを20%削減
  • AI導入:データ分析の精度を50%向上

「2025年の世界のIT支出は、前年比で9%以上も伸びるらしいですよ」

もしあなたが経営会議でこのニュースを耳にしたら、どう感じるでしょうか。「お、景気がいいな! うちの予算も通りやすくなるかも?」と期待するかもしれません。あるいは、「いやいや、ベンダーからの見積もりが高くなってるだけで、実質的な余裕なんてないよ……」と溜息をつくかもしれません。

実は、その「溜息」のほうが、今の現場の感覚には近いかもしれません。

Gartnerなどの主要な調査会社が発表した2025年のIT支出予測は、確かに表面上の数字は9.3%増という驚異的な伸びを示しています。しかし、その内訳を解像度高く見ていくと、手放しでは喜べない「歪(いびつ)な構造」と、私たちの足元に忍び寄る「影」が見えてきます。

「世界はITブームだ」というニュースの見出しと、現場で感じる「予算の窮屈さ」。このギャップの正体は何なのか? そして、私たちは2025年の予算とどう向き合えばいいのか?

企業の経営企画やIT部門の皆さんと一緒に、少し冷静に、数字の裏側を紐解いていきましょう。

2025年IT支出「9%増」の正体とは?

2025年のIT支出は9%成長 その背景とは?
引用:TechTargetジャパン「2025年の世界IT支出は「9%成長」 影を落とす“不安要素”とは?」

2025年のIT支出は前年比9%の成長が見込まれています。企業のDXが加速し、クラウドやAIの活用がますます広がっています。ただし、経済や地政学的な不安要素もあり、企業は慎重に投資戦略を練る必要があります。

ここでは、成長を後押しする主要な要因を詳しく解説します。

まずは、世間を賑わせている「景気のいい数字」の正体を突き止めておきましょう。なぜ今、これほどまでにITへのお金が動いているのでしょうか。

Gartner予測:世界で約870兆円規模へ

2024年10月、Gartnerが発表した予測によれば、2025年の世界IT支出総額は5兆7,400億ドル(1ドル150円換算で約861兆円)に達すると見られています。成長率は前年比9.3%。これは近年のIT市場でもトップクラスの伸び率です。

通常、企業のIT予算というのは売上の1〜3%程度で推移するものですが、世界全体でこれだけの伸びを見せている背景には、明らかに「異常値」とも言える投資ブームが存在します。

牽引役は「サーバー」:驚異の35%増

この成長率を牽引しているのは、PCでもスマホでもありません。圧倒的な主役は**「データセンターシステム」**です。

Gartnerの予測では、データセンターシステムへの支出は2024年に続き、2025年も爆発的に伸びるとされています。特にサーバーの売上は、2023年の約1,340億ドルから、2028年には3,320億ドルへと、わずか数年で3倍近くに膨れ上がると予測されています。

理由は言わずもがな、「生成AI(GenAI)」です。

今、Google、Microsoft、Amazonといった巨大テック企業から、自社専用のLLM(大規模言語モデル)構築を目指すエンタープライズ企業までが、NVIDIAのGPUなどを搭載したAIサーバーを奪い合うように購入しています。これが、IT支出全体の数字を大きく押し上げているのです。

いわば、「ゴールドラッシュにおけるツルハシ(サーバー)の爆買い」が、2025年のIT市場の実態と言えます。

ソフトウェアとITサービスも2桁成長へ

ハードウェア(サーバー)だけではありません。その上で動くソフトウェアも約14%増、システムの導入や保守を担うITサービスも約9.4%増と、高い成長率が予測されています。

企業はサーバーを買うだけでなく、AIを組み込んだSaaSを契約したり、セキュリティ対策を強化したりと、ソフト面への投資も加速させています。一見すると、IT業界全体が潤い、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に進む「黄金時代」のように見えます。

しかし、ここからが本題です。この華やかな数字の裏には、現場の担当者が直面する「影」の部分が隠されています。

数字の裏に潜む「影」:手放しで喜べない3つの不安

「世界中でIT投資が増えているなら、うちの会社のDX予算も増えて当然ですよね?」

そう上司に詰め寄りたいところですが、現実はそう単純ではありません。むしろ、この世界的なIT支出増が、かえって個々の企業のIT戦略を難しくしている側面があります。

ここでは、TechTargetなどの報道や市場の空気感から読み取れる、3つの「不安要素(シャドウ)」について解説します。

不安1:予算増の正体は「インフレ」と「ライセンス料値上げ」

これが最も現場を苦しめている要因でしょう。 「IT予算が増えた」と言っても、それが「新しいことができるようになった」ことを意味しないケースが増えています。

  • SaaSの値上げラッシュ: ドル建てのサービスはもちろん、国内ベンダーも人件費高騰を理由にライセンス料を引き上げています。
  • ハードウェア単価の上昇: 半導体不足や円安の影響で、PCやサーバーの調達コストが上がっています。
  • 人件費の高騰: IT人材の不足により、外部ベンダーのSE単価(人月単価)が上昇しています。

つまり、「前年比110%の予算を確保したけれど、できることは昨年と同じ(現状維持)」という現象が起きているのです。これは「成長投資」ではなく、単なる「インフレ対応」です。

経営層から見れば「ITに金をかけているのに、何も新しい成果が出てこないじゃないか」と映りかねず、情シス担当者にとっては胃の痛い状況が続きます。

不安2:生成AIへの「一点突破」リスクとROIの不透明さ

2つ目の不安は、投資のバランスです。 世界的な支出増の主因が「AIサーバー」であるように、多くの企業のIT予算が「生成AI関連」に吸い寄せられています。

「競合他社もAIをやっているから、うちも乗り遅れるな」という号令のもと、高額なAIインフラやCopilot系ツールの導入に予算が割かれます。その結果、何が起きるか?

  • 既存システムの刷新(レガシー脱却)が後回しにされる
  • 地味だが重要なセキュリティ対策やネットワーク増強の予算が削られる

これを**「AIクラウディングアウト(AIによる予算の押し出し)」**と呼んでもいいかもしれません。 さらに怖いのは、AI投資のROI(費用対効果)がまだ明確ではない点です。「高額なGPUサーバーを買ったけれど、社内で誰も使いこなせていない」「Copilotを全社導入したが、業務時間が短縮された実感が薄い」。そんな「高価な文鎮」化のリスクが、2025年はより顕在化してくるでしょう。

不安3:地政学リスクと供給サプライチェーンの目詰まり

3つ目は、自分たちの努力ではどうにもならない外部要因です。

AIサーバーに不可欠な高性能半導体は、特定の国や地域での生産に依存しています。米中対立の激化や、台湾海峡の緊張といった地政学的リスクが高まれば、「お金があってもモノが届かない」という事態になりかねません。

また、世界的な電力不足も懸念されています。データセンターが消費する電力が膨大になりすぎて、新たなサーバーを設置したくても電力供給が追いつかない、あるいは電気代が高騰しすぎて運用できない、という物理的な制約が「影」として落ちています。

「賢いIT投資」に転換するための3つの防衛策

ここまで、少し怖い話をしてきました。 「じゃあ、2025年はIT投資を控えたほうがいいの?」

いえ、そうではありません。リスクがあるからこそ、「闇雲な投資」をやめて「賢い投資」に切り替えるチャンスでもあります。 ここからは、2025年のIT予算を実りあるものにするための、具体的なアクションプランを3つ提案します。

ステップ1:予算の「守り」と「攻め」を厳格に色分けする

まず、予算のどんぶり勘定をやめましょう。 多くの企業では、ライセンス更新費用も、新規AI開発費用も、ひとまとめに「IT予算」として管理しがちです。これだと、インフレによるコスト増が、攻めの投資を食いつぶしてしまいます。

これからは、以下の2つ(あるいは3つ)の財布を明確に分けて管理することをお勧めします。

  1. Run the Business(守りの予算):
    • 既存システムの維持、ライセンス更新、セキュリティ対応。
    • ここは「インフレ率+α」で自動的に増額される仕組みを経営と合意しておく必要があります。「現状維持にもコストがかかる」ことを数字で示しましょう。
  2. Change the Business(攻めの予算):
    • 生成AI導入、新規DX施策。
    • ここは、「成果が出なければカットする」という厳しい基準とセットで予算化します。

「守りのコスト増」を隠さずに可視化することで、経営層に対して「攻めの予算がこれだけ圧迫されている」という事実を突きつけることができます。

ステップ2:AI投資は「ハード」より「ユースケース」先行で

Gartnerの予測ではサーバー(ハードウェア)が売れていますが、一般企業がその流行に乗って自前でAIサーバーを買い込むのはリスクが高すぎます。技術の陳腐化スピードが速すぎるからです。

2025年の戦略としては、「ハードは持たずに、使い倒す」が正解でしょう。

  • いきなりGPUサーバーを買わない: クラウドのAIサービス(SaaS/PaaS)を利用し、必要な時だけ課金する。
  • PoC(概念実証)貧乏を避ける: 「何ができるか試そう」ではなく、「この業務のこの時間を50%削減する」という具体的なユースケースを決めてからツールを選定する。

「隣の会社がH100(最新GPU)を入れたらしい」という噂に惑わされず、自社の身の丈に合った「利用」に徹することが、火傷しないコツです。

ステップ3:ベンダーロックイン回避と価格交渉術

ソフトウェア費用が14%も上がる時代です。ベンダーから提示された「値上げ通知」をそのまま判子を押してはいけません。

  • 棚卸しの徹底: 「本当にそのライセンス数は必要か?」「退職者のIDが残っていないか?」「機能が重複しているツールはないか?」
  • 相見積もりの活用: SaaSはスイッチングコストが高いと思われがちですが、競合製品をチラつかせることで、値上げ幅を抑制できるケースは多々あります。
  • 長期契約の検討: 今後も使い続ける確信があるなら、単年契約ではなく3年契約などで価格を固定(フィックス)し、将来の値上げリスクをヘッジするのも有効な手です。

FAQ:2025年のIT予算編成でよくある疑問

ここで、現場の皆さんからよく寄せられる疑問について、Q&A形式で答えておきます。

Q1. 日本企業のIT予算も、世界と同じく「9%増」の傾向ですか?

A. 増加傾向ですが、世界よりは慎重です。 野村総合研究所(NRI)などの国内調査を見ると、日本企業の約半数がIT予算を増やす意向を示していますが、その勢いは2024年に比べるとやや鈍化しています。円安によるコスト増や、過去のDX投資の成果が問われるフェーズに入っているため、「厳選投資」の傾向が強まっています。

Q2. 生成AIに予算を割けない企業はどうすべきですか?

A. 無理に予算を割く必要はありません。「データ整備」に注力してください。 AIにお金をかけられないなら、AIが食べるための「データ」をきれいにする(データマネジメント)ことにリソースを使いましょう。データさえ整っていれば、将来AIコストが下がったタイミングで、すぐに効果を出せます。これは今できる最良の投資です。

Q3. 経営層を説得するキラーワードはありますか?

A. 「技術的負債への利払いが増えています」と言ってみてください。 古いシステムを使い続けるコスト(維持費・セキュリティリスク)が増大していることを、「借金の利息」に例えて説明します。「今、投資して刷新しないと、来年はもっと高い利息を払うことになります」というロジックは、財務視点を持つ経営層に響きやすいです。

まとめ:9%の波に溺れず、自社の航路を守れ

2025年のIT支出「9%増」という予測は、IT業界全体の活況を示す希望の数字であると同時に、過熱するAI投資と止まらないインフレが織りなす「波の高さ」でもあります。

重要なのは、この波に乗って無闇にサーバーやツールを買い込むことではありません。 「なぜITに投資するのか?」という原点に立ち返り、自社のビジネスを成長させるための投資と、事業を継続させるためのコストを冷静に見極める眼力です。

  • 見かけの数字に踊らされない。
  • 「守り」のコスト増を可視化する。
  • 「攻め」のAIはユースケース重視で。

この3つを心に留めて、2025年の予算策定という荒波を乗り越えていきましょう。

皆さんのIT戦略が、単なる「支出」ではなく、未来への確かな「投資」となることを願っています。

引用元

TechTargetジャパン「2025年の世界IT支出は「9%成長」 影を落とす“不安要素”とは?」

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