
東日本大震災から14年。あの悲劇は、日本社会に防災意識と新たな技術導入の必要性を強く印象づけました。
震災の教訓を踏まえ、防災への取り組みは年々高度化しており、最新のAI技術、IoT、DX、そしてメタバース(XR)といった先端テクノロジーが、新たな防災ソリューションとして注目されています。
本記事では、AIが防災分野でどのように活用されているのか、国内外の成功事例を交えながら、その可能性と課題について探ります。さらに、私たちAI専門企業がどのように社会に貢献できるかを考察していこうと思います。
AIと防災テックの現状:災害リスクに立ち向かう新技術

1. 災害リスクの早期予測と警戒
最新のAI技術は、地震、津波、台風、洪水などの自然災害のリスクをリアルタイムで解析し、予測する能力を大幅に向上させています。
富士通研究所の津波被害軽減予測プロジェクト
東京大学、東北大学、川崎市との共同研究で、地域ごとの地形特性を踏まえた津波シミュレーションを実施。リスクの高いエリアを事前に特定し、迅速な避難指示の策定に寄与しています。
NTTの通信ケーブル被災予測システム
台風による通信インフラの断線リスクを、過去の台風データをAIが学習することで予測。これにより、復旧作業に必要な人員や資材の手配を事前にシミュレーションし、復旧期間を大幅に短縮しています。
2. リアルタイム情報収集と迅速な対応
災害発生時、正確な情報を迅速に収集し伝達することが被害軽減に不可欠です。最先端技術が、現場の混乱を防ぐ大きな役割を果たします。
- ウェザーニューズの降水分布可視化プロジェクト
NVIDIAのディープラーニング技術を活用し、全世界の降水分布を高精度に可視化。台風や大雨の前に細かい予測を立てることで、住民の安全な避難をサポートします。 - LINEの多言語防災チャットボット
24時間365日、災害時にリアルタイムで避難情報や被害状況を提供。多言語対応で外国人観光客も含めた住民全員に、必要な情報を迅速に届けます。 - PulseSatellite(学術事例)
人間とAIのフィードバックループを利用し、衛星画像を迅速に解析。避難所や洪水被害のマッピングを行い、現地での人道支援の精度向上に貢献しています。
3. 地域密着型ソリューションと官民連携の強化
地域ごとの特性に合わせた防災対策は、官民連携でさらに効果を発揮します。
香川県高松市のIoTセンサーによる水位監視
IoTセンサーで水位や潮位をリアルタイムに監視。洪水や高潮のリスクを早期に察知し、住民への避難情報提供を可能にしています。
応用地質株式会社の災害対策情報提供システム
監視カメラや河川データをAI解析で統合し、自治体向けに的確な避難指示と救助活動をサポート。現場の情報ギャップを埋め、救援の迅速化に貢献しています。
内閣府の防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム(防テクPF)
地方自治体と民間企業の先進技術をマッチングするプラットフォームを運用。全国で統一された防災対策の導入を推進し、効果的な情報連携を実現しています。
仙台市のBOSAI-TECHプロジェクト
仙台市は、JETROと連携し、国内外の企業を巻き込んだ防災テックの育成に取り組んでいます。日本発の防災ソリューションを世界に発信するため、オープンイノベーションを促進中です。
国外における先進事例とその示唆
1. One Concern(アメリカ)
One Concernは、AIとビッグデータ解析を駆使して、地震、洪水、津波のリスクをリアルタイムに予測するプラットフォームです。これにより、災害シナリオのシミュレーションを行い、迅速な救援活動とインフラ対策を支援しています。
2. Google Crisis Response
Googleは、検索データや位置情報、ソーシャルメディアを統合して被災地の状況を視覚的に把握。迅速な情報提供により、災害時の対応力を高めています。
3. IBM Watson for Disaster Response
IBM Watsonは、災害発生時のデータ解析と被害予測を通じて、意思決定支援を行うソリューションを提供。これにより、災害対応の効率化と迅速な復旧支援が実現されています。
4. スマートシティの海外事例
- LinkNYC(ニューヨーク):公共Wi‑Fiプラットフォームを活用し、都市全体の防災情報基盤を整備。
- Barcelona Digital City(バルセロナ):スマートパーキングやゴミ収集管理など、都市機能を効率化しつつ防災対策を強化。
- Smart Nation Singapore(シンガポール):政府主導でデジタル化を進め、防災も含む高度な公共サービスを提供。
- ET City Brain(杭州市):AIとカメラネットワークを組み合わせ、都市の交通管理と災害対応を最適化。
5. KDDI総合研究所の防災調査レポート
米国の防災技術や事例を調査し、全フェーズにおけるデジタル化と官民連携の重要性を詳述。これらの知見は、日本の防災テックの更なる進化に貢献する示唆となっています。
AI専門企業としての私たちの挑戦

私たちアローサル・テクノロジーは、AI時代をリードする企業として、企業の成長と社会課題の解決に挑戦しています。AIとDXの力で迅速な対応と持続可能な安全社会の実現を目指すべく、次の4本柱のサービスを展開しており、どんな挑戦ができるでしょうか。
1. AIリスキリング
現場で即戦力となるAI人材の育成は、防災テックの根幹を成す重要な要素です。
目的:DX推進に必要な知識とスキルを、実務や非常時に活用できる形で習得する。
内容:生成AIの基礎、ChatGPTや各種AIツールの活用方法、AI倫理やセキュリティなど、企業や自治体、教育機関のニーズに合わせたオーダーメイドのカリキュラムを提供。
効果:実際の災害時、AIを活用して状況を把握し、迅速な意思決定をサポートする力を強化。
2.AIコンサルティング
企業や自治体が日々の業務から非常時の対応まで、AI技術を効果的に導入するためのコンサルティングサービスを提供します。
目的:各組織の現状や課題を正確に把握し、最適なAI導入計画やロードマップを策定する。
内容:業務の棚卸し、AIアセスメント、プロンプト作成、そして社内体制の構築支援など、組織全体でのDX推進を支援。
効果:導入前の不透明な課題を整理し、適切なソリューションの提案により、企業の競争力向上や防災対策の迅速化を実現します。
3.AIインテグレーション
生成AI技術「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」を活用して、膨大な情報を効率的に処理し、防災現場で必要な情報を適時に提供できる環境を整えます。
目的:豊富なデータとAIを連携させ、リアルタイムの情報提供や迅速な意思決定を可能にするシステムを構築する。
内容:RAG技術を用いたプロンプト管理、エージェントの作成、そして自社独自のAIモデルの開発。これにより、災害リスクの予測や被害状況の可視化、避難指示の自動化などが実現できます。
効果:システム全体の精度向上と、運用コストの削減を実現。さらに、セキュアなAzure環境上でのサービス提供により、データ漏洩のリスクを排除します。
4. AIメディア
情報発信とコミュニケーションの力は、防災テックの普及に不可欠です。私たちは自社メディアを運用し、最新のAI防災技術やDX、リスキリングに関する情報を発信します。
目的:業界内外の知見を広く共有し、防災テックの価値を伝えるとともに、顧客やパートナーとのエンゲージメントを高める。
内容:AIや生成AIに関するニュース、事例紹介、技術解説、専門家インタビューなどを定期的に配信。
効果:情報の透明性とアクセス性を高め、業界の標準形成やオープンイノベーションの促進に寄与します。また、内部のリスキリング研修とのシナジーも図り、社内外の連携強化を実現します。
2025年防災万博で発信する未来のビジョン

今、防災は国内外で注目のトレンドとなり、2025年5月28日、大阪・関西万博 EXPOホールにて開催される「防災万博」は、国内外の先進事例と最先端技術を一堂に集約する国際イベントです。防災を中心に、AI、DX、メタバース(XR)などの革新的技術を活用したプロジェクトが発表され、地域活性化と持続可能な社会の実現を目指します。
国内外の企業、自治体、研究機関が一丸となって、未来の災害リスク軽減と安全な社会の実現に向けた協力体制を築くための出発点となります。
まとめ
東日本大震災から14年、防災は依然として喫緊の課題です。国内では、富士通研究所、NTT、ウェザーニューズ、LINE、高松市、応用地質、内閣府、仙台市の「BOSAI-TECH」など、先進的な防災ソリューションが進行中です。国外では、One Concern、Google、IBM、さらにPulseSatelliteなど、世界各国で革新的な取り組みが展開されています。
AIを専門とする私たちは、防災リスクの予測、リアルタイム情報の提供、リスキリング、そして官民連携を通じたオープンイノベーションにより、未来の防災をリードするソリューションを提供できます。
2025年の防災万博は、防災とテクノロジーを紐づける大きな転換点となるでしょう。
防災とテクノロジーの融合が、命と社会を守る未来の安全社会実現の鍵です。私たちは、日々のAI活用と発信を通じて、持続可能な安全社会の構築に向け、今後も挑戦と革新を続けていきます。