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| 効率化できる業務 |
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「AIを導入すれば、エンジニアの生産性は2倍になる」
そんな夢のような話を信じて、AIコーディングツールを導入したものの、なぜか現場からは「前より忙しくなった」「バグが増えた」という悲鳴が上がっている……。あなたの会社で、そんな矛盾した状況は起きていませんか?
実は、エンジニアのプラットフォームを提供する「Findy(ファインディ)」のような技術先進企業でさえ、AI導入によって「一時的に生産性が低下する」という壁に直面しました。
なぜ、魔法の杖であるはずの生成AIが、時として開発の足を引っ張る「重荷」に変わってしまうのか。本記事では、ファインディの事例を徹底解剖し、DX推進部や情シス部門が知っておくべき「AI活用の真実」と、その克服方法を詳しく解説します。
AIコーディング導入で『生産性が低下』する衝撃の事実

なぜ『魔法の杖』が武器にならないのか
多くの経営層やマネジメント層は、AI(GitHub Copilotなど)を導入すれば、ソースコードが自動生成され、単純に工数が削減されると考えがちです。しかし、現実はそう甘くありません。
AIは確かに「もっともらしいコード」を瞬時に書き上げますが、それが「自社の既存システムに最適か」「将来的に保守しやすいか」までは保証してくれません。人間が30分かけて考えていたコードをAIが1秒で出力したとしても、その後の「確認(レビュー)」に1時間かかってしまえば、トータルの生産性はむしろマイナスです。
「AIが書いたから大丈夫だろう」という心理的バイアスが働くと、本来見つけるべきバグを見逃し、後から大規模な手戻りが発生する。これこそが、現代のAI開発における最大の落とし穴です。
ファインディ社が直面した現実的な課題
開発者体験の向上を掲げるファインディ社。彼らが直面したのは、AIが生成するコードの「量」に、人間の「質」の担保が追いつかなくなるという現象でした。
AI導入直後、コードの出力速度は劇的に上がりました。しかし、それに比例してプルリクエスト(コードの変更申請)の数も増大。レビューを担当するシニアエンジニアのタスクがパンクし、結果としてリリースまでのリードタイムが伸びてしまったのです。効率化のためのAIが、組織のボトルネックを可視化させ、一時的に現場を混乱させる結果となりました。
【事例】ファインディが経験した生産性低下の3大要因
1. コードレビューの負荷増大と心理的バイアス
AIコーディングツールの最大の特徴は、サジェスト(提案)の速さです。しかし、人間は「自分が書いたコード」よりも「他人が書いたコード(特にAI)」をチェックする方が疲弊します。
- レビュー疲れ: 大量のコードが次々と生成されるため、チェック側の集中力が切れる。
- 権威への服従: 「AIが提案しているのだから、これがベストプラクティスだろう」という無意識の過信(自動化バイアス)。
ファインディの現場では、この「AI特有のノイズ」をどうフィルタリングするかが大きな課題となりました。
2. 『AIが書いたから正しい』という過信の代償
生成AIは、時として「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」をつきます。存在しないライブラリを呼び出したり、一見動くように見えて特定の条件下で致命的なエラーを吐くコードを生成したりします。
エンジニアがこの「もっともらしさ」に騙されると、テスト工程で原因不明のバグに悩まされることになります。AIは「過去の学習データ」に基づいた確率的な回答をしているに過ぎず、あなたの会社の「今」のビジネスロジックを知っているわけではないのです。
3. 既存システムとの整合性欠如による技術的負債
AIは、ファイル単体の修正には強いですが、システム全体のアーキテクチャ(構造)を俯瞰して整合性を取ることはまだ苦手です。
- 一貫性の欠如: 他のパーツと微妙に合わないコードが増える。
- 継ぎはぎの開発: 「動けばいい」コードが積み重なり、1年後には誰も触れない「スパゲッティコード」と化すリスク。
これらは、導入初期には見えにくい「隠れたコスト」として、着実に生産性を蝕んでいきます。
失敗しないAIコーディング導入の3ステップ
では、私たちはどうすればAIの恩恵を正しく享受できるのでしょうか。ファインディの教訓を活かした3つのステップを提案します。
ステップ1:AIが得意な領域と人間が担うべき領域の再定義
「全部AIにやらせる」のではなく、得意不得意を明確に分けましょう。
- AIに任せる: ボイラープレート(定型文)の作成、ユニットテストの下書き、正規表現、単純なリファクタリング。
- 人間が担う: 全体の設計、ドメインモデルの定義、非機能要件(セキュリティやパフォーマンス)の判断。
「考える」ことは人間に、「作業する」ことはAIに。この境界線をチーム内で言語化することがスタートです。
ステップ2:レビュー基準の厳格化と自動テストの強化
AIがコードを量産するなら、チェックも機械化すべきです。
- 静的解析ツールのフル活用: 人間がチェックする前に、LinterやセキュリティスキャンでAIのミスを自動で弾く。
- テストファーストの徹底: AIにコードを書かせる前に、人間が「期待する動作(テストコード)」を定義する。
「AIを信じない仕組み」を作ることこそが、結果としてAIを最も有効に活用する近道になります。
ステップ3:組織文化としての『AIとの対話力』の育成
プロンプトエンジニアリングは、単なるテクニックではなく、エンジニアの「言語化能力」そのものです。
「ここを直して」という曖昧な指示ではなく、「〇〇の条件下で、△△のセキュリティ規約を遵守しつつ、メンテナンス性を高める構成で書いて」と具体的に指示できる能力。この「AIとの対話力」を組織全体で底上げすることが、生産性低下を防ぐ鍵となります。
【成功 vs 失敗】AI活用で明暗を分けるポイント
| 比較項目 | 成功する組織(AIを使いこなす) | 失敗する組織(AIに振り回される) |
|---|---|---|
| 導入目的 | 開発者体験の向上と付加価値創造 | 単純な人件費削減・工数カット |
| レビュー体制 | 自動テストとペアプロを強化 | AI任せで人間がノーチェック |
| 評価指標 | アウトカム(価値)で評価 | アウトプット(コード量)で評価 |
| 教育 | AIの特性と限界を学ぶ研修を実施 | ツールを配布して「自由に使え」 |
現場エンジニアのリアルな声(一次情報の洞察)
ある現場エンジニアはこう語ります。「AIが入ってから、仕事は楽になるどころか、より高い判断力が求められるようになった。AIが出してきた3つの案のうち、どれが5年後のシステムにとって正解か。それを決めるのは、結局僕ら人間なんです」
この「最終決定の重み」を理解している組織こそが、AIを真の武器に変えることができます。
まとめ:AIは『道具』であり『代替』ではない
3行まとめ
- AIコーディングは、過信するとレビュー負荷の増大と技術的負債を招き、生産性を低下させる。
- ファインディの事例が示す通り、導入初期の混乱は「組織のボトルネック」が可視化された結果である。
- 成功の鍵は、AIが得意な「作業」と人間が担う「判断」を明確に分け、自動テストの仕組みを整えることにある。
次のアクション
まずは、現場のエンジニア数名と「AIを使っていて、正直どう感じているか?」という本音のディスカッションを設けてみてください。ツールを導入して終わりにせず、運用の「泥臭い改善」を継続すること。それが、2026年のDX推進における正攻法です。
引用元
