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| 効率化できる業務 |
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「2年後、開発者の仕事から『コーディング』が消えるかもしれない」。
もしあなたが経営者や人事担当者なら、この言葉を聞いてどう感じますか?
「じゃあ、もう新卒エンジニアの採用はストップして、AIと少数のベテランだけで回せばいいのでは?」
コスト削減のプレッシャーに晒されている中、ふとそんな考えが頭をよぎったとしても無理はありません。
しかし、結論から言わせてください。その判断は、将来的に組織の技術力を壊滅させる「甘い罠」です。
AWS(Amazon Web Services)のCEO、マット・ガーマン氏が最近漏らした「予言」は、一見すると開発者の終わりを示唆しているように見えて、実は「若手エンジニアの役割の劇的な進化」を訴えているのです。今回は、この衝撃的な発言の真意を紐解きながら、AI時代に企業が採るべき「人間」の戦略について、現場の視点を交えて深く考えていきましょう。
「24ヶ月以内にコーディングはAIの仕事になる」の真意

衝撃的なリーク発言
事の発端は、AWSのCEOマット・ガーマン氏が社内向け会議(ファイアサイドチャット)で語ったとされる内容です。彼は、AIの進化速度を踏まえ、「今後24ヶ月以内に、開発者が現在行っているコーディング作業の大部分をAIが行うようになる可能性がある」と述べました。
これだけを聞くと、「エンジニア不要論」に聞こえますよね。しかし、彼の主張の本質はその先にあります。
「コードを書く」から「プロダクトを創る」へ
ガーマン氏はこう続けています。
「コーディングは、あくまで開発者にとっての言語(手段)にすぎない。スキルセットの中心は、イノベーションを起こし、興味深いものを作り上げることにシフトするだろう」。
つまり、こういうことです。これまでの「駆け出しエンジニア」の仕事は、仕様書通りにひたすらコードを書く「翻訳作業」が中心でした。しかしこれからは、AIという超優秀なアシスタントを指揮し、「どんな課題を解決するか」「どんな価値をユーザーに届けるか」を設計する「建築家(アーキテクト)」としての役割が、1年目から求められるようになるのです。
これは、エンジニアにとって「終わりの始まり」ではなく、「本来のクリエイティビティへの回帰」と言えるのではないでしょうか。
なぜ、AI時代でも「駆け出し(Entry-Level)」が必要なのか?
ここで一つの疑問が浮かびます。「AIがコードを書くなら、経験豊富なシニアがいれば十分で、教育コストのかかるジュニアは不要では?」
これは多くの企業が陥りがちな落とし穴です。なぜAIは若手を置き換えられないのか、3つの視点で解説します。
1. AIは「文脈」を理解できない
AIは膨大なコードパターンを知っていますが、あなたの会社の「社内政治」や「長年の技術的負債の経緯」、「特定の顧客の暗黙のこだわり」までは知りません。
若手エンジニアが現場で学ぶのは、実はプログラミング言語そのものよりも、こうした「行間にあるビジネスの文脈」です。この文脈理解がないままAIにコードを書かせても、現場では使い物にならない「綺麗なガラクタ」が量産されるだけです。
2. 「レビュー」をするのは誰か?
AIが書いたコードは、必ずしも正解とは限りません。セキュリティホールがあるかもしれないし、非効率な処理が含まれているかもしれない。
もし組織から「学ぶ過程にある若手」を排除してしまったら、AIのアウトプットを批判的に検証し、修正できる次世代のシニア層はどこから生まれるのでしょうか?
「AIが書いたものを人間が直す」プロセスこそが、これからのOJT(On-the-Job Training)の核心になります。
3. 「問い」を立てる力
「AWSのCEOが言うように、開発者の仕事はイノベーションになる」。
これは美しい言葉ですが、現実はもっと泥臭いものです。AIは「こうしたい」と指示すれば答えを出しますが、「そもそも何が問題なのか?」という課題発見はしてくれません。
若手エンジニアが現場でユーザーの不満を聞き、先輩の背中を見て「何を作るべきか」を学ぶプロセスは、AIには代替不可能な人間的成長のステップなのです。
導入ステップ:これからの若手エンジニア育成「3つのシフト」
では、企業はこれからの採用・育成をどう変えるべきか? 具体的なアクションプランを提案します。
Step 1:採用基準の転換(「書き方」から「設計力」へ)
従来の採用テストでは「特定のアルゴリズムを実装できるか」が重視されてきました。
これからは、以下のような評価軸に変えてみてください。
- Before: 「この配列をソートするコードを書いてください」
- After: 「AIを使っていいので、この顧客課題を解決するシステム構成案を30分で提示し、なぜその構成にしたか説明してください」
コードの文法暗記ではなく、「最適な解決策を選び取る論理的思考力」を見極めるのです。
Step 2:AIペアプログラミングの必修化
新入社員研修で「AI禁止」にする企業もありますが、これは逆効果です。むしろ「AIとペアプログラミングさせる」ことを標準にしましょう。
実践例: 新人が書いたコードをAIにレビューさせる。逆に、AIに書かせたコードのバグを新人が探す「デバッグ大会」を開く。
これにより、AIを「サボる道具」ではなく「思考を壁打ちするパートナー」として扱う作法を叩き込みます。
Step 3:ビジネス・エンゲージメントの強化
開発室に閉じこもってコードを書くだけの研修は終わりにしましょう。
早い段階から営業同行やカスタマーサポートの現場を見せ、「誰のために、なぜ作るのか」という一次情報に触れさせます。AIが代替できない「共感力」や「ドメイン知識」こそが、将来の彼らの最大の武器になるからです。
成功・失敗の分かれ道:現場のリアル
ここで、少し視点を変えて、現場で起きている「AI活用」のリアルな成否を見てみましょう。
| 項目 | 失敗する組織(AI依存) | 成功する組織(AI協働) |
|---|---|---|
| 若手への指示 | 「AIに聞いておいて」と丸投げする | 「AIの回答と君の考え、両方持ってきて」と問う |
| 評価基準 | 書いたコードの行数(量) | 実装した機能のビジネス価値(質) |
| トラブル時 | 「AIが書いたので分かりません」と言う | AIの提案の裏を取り、ロジックを説明できる |
| 成長曲線 | 基礎を知らずに応用ばかり使い、壁にぶつかる | AIで単純作業を圧縮し、設計・企画スキルが早期に伸びる |
ここがポイント:
AIは「平均点」の回答を出すのは得意ですが、「その企業ならではの正解」は出せません。成功する組織は、AIを使い倒しながらも、最終的な意思決定(責任)は人間が取るという文化を徹底しています。
まとめ:開発者は「作家」から「編集長」へ
今回のAWS CEOの発言は、決して開発者の不要論ではありません。むしろ、「開発」という仕事の定義がアップデートされたという宣言です。
これからの若手エンジニアは、一文字一句を自分で執筆する「作家」から、AIという優秀なライターを束ね、プロダクト全体の方向性を示し、品質を担保する「編集長」のような存在へと進化していくでしょう。
【明日からできるアクション】
まずは、自社のエンジニアのスキルマップ(評価項目)を見直してみてください。「コード記述能力」の比重を少し下げ、「AI活用力」「システム設計力」「ビジネス理解」の項目を追加してみませんか?
AIは強力な波ですが、その波を乗りこなすサーファーを育てるのは、やはり企業の「意思」なのです。
引用元
Ledge.ai「AIは駆け出しの開発者を置き換えられない──AWSのガーマンCEO、WIREDのポッドキャストで3つの理由を説明」
