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「本仕込」「ネオバターロール」でおなじみのフジパンが、今、大きな一歩を踏み出しました。約2万3000人もの従業員を支えるため、多言語対応のAIチャットボットを導入し、年間約6.3万件にも上る社内問い合わせの自動化に乗り出したのです。
「なんだ、またDXの話か」なんて思わないでくださいね。多様な働き方が求められる現代で、企業が従業員一人ひとりとどう向き合っていくべきか、その答えのヒントが隠されています。
なぜ今、フジパンはAIチャットボット導入を決断したのか?

巨大な組織を運営する裏側では、私たちが想像する以上のコミュニケーション課題が存在します。フジパンも例外ではありませんでした。
深夜でも、外国籍でも。「いつでも誰でも」を阻む3つの壁
「ちょっと聞きたいことがあるけど、今は担当者がいない…」 「日本語での質問は、少しハードルが高いな…」
フジパンには、全国各地の工場で働く従業員がいます。24時間稼働の工場では夜勤の従業員も多く、日中の総務部門に問い合わせをするのは簡単ではありません。さらに、近年増えている外国籍の従業員にとっては、言葉の壁も無視できない問題でした。
- 時間の壁: 問い合わせ窓口の営業時間が、全従業員の勤務時間と合致しない。
- 場所の壁: 本社や支社の担当者に、現場から気軽にアクセスできない。
- 言葉の壁: 外国籍の従業員が、母国語で気軽に質問できる環境がない。
これらの壁は、従業員の小さな疑問や不安を放置させ、結果的に生産性の低下やエンゲージメントの低下に繋がりかねません。まさに、見過ごすことのできない経営課題だったのです。
年間42万件の問い合わせ!総務部に集中する業務負荷の実態
一方で、問い合わせを受ける総務部門も悲鳴を上げていました。その数、なんと年間推定42万件。社内ルールや各種申請手続きに関する、ありとあらゆる質問が集中していたのです。
一つ一つの質問は些細なことかもしれません。しかし、同じような質問に何度も答え、本来集中すべきコア業務の時間が奪われていく…。これは多くの企業で共通する「あるある」な悩みではないでしょうか。担当者の疲弊は、組織全体の活力を削いでしまいます。フジパンは、この負のスパイラルを断ち切るため、AIという新たな仲間を迎え入れる決断をしました。
課題解決の切り札!多言語対応AI「HUEチャットボット」とは?
そこで白羽の矢が立ったのが、ワークスアプリケーションズが提供するAIチャットボット「HUE チャットボット」でした。数あるツールの中で、なぜこのチャットボットが選ばれたのでしょうか?その秘密は、驚くべき「賢さ」と「柔軟性」にありました。
ただの自動応答じゃない!RAG技術が実現する「賢い」対話
皆さんは「AIチャットボット」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?もしかしたら、「決まった質問にしか答えられない、ちょっとおバカなロボット」を想像しているかもしれません。しかし、技術は日々進化しています。
「HUE チャットボット」には、RAG(Retrieval-Augmented Generation) という最新技術が搭載されています。これは、あらかじめ登録された社内規程やマニュアルなどの膨大なドキュメントの中から、AIが質問の意図を汲み取って最適な回答を探し出し、自然な文章で生成してくれる技術です。
例えるなら、「超優秀な新人さんが、分厚いマニュアルをすべて頭に入れて、いつでも正確に答えてくれる」ようなもの。これにより、「〇〇の申請方法を教えて」といった直接的な質問だけでなく、「こういう場合はどうすればいい?」といった曖昧な質問にも、的確に答えられるのです。
ベトナム語、インドネシア語にも対応!多様性を受け入れる体制づくり
フジパンが特に評価したのが、その多言語対応能力です。ベトナム語やインドネシア語など、様々な言語に対応しているため、外国籍の従業員も母国語で安心して質問できます。
これは単に「便利」というだけではありません。「私たちは、あなたの国の言葉でサポートします」という企業の姿勢は、従業員に安心感と信頼感を与え、組織への帰属意識を高める効果も期待できます。まさに、ダイバーシティ&インクルージョンを体現するツールと言えるでしょう。
クラウドベースで導入もスムーズ!情シス部門が喜ぶメンテナンス性
「新しいシステムの導入は、管理が大変そう…」と心配する情報システム部門の方もご安心を。このチャットボットはクラウドサービスなので、サーバーの管理などは不要です。
さらに、新しい社内ルールが追加された場合も、そのドキュメントをアップロードするだけでAIが自動で学習してくれるため、FAQを一件一件手作業で登録・更新するような手間もありません。このメンテナンス性の高さは、IT部門の負担を大幅に軽減し、より戦略的な業務にリソースを集中させることを可能にします。
導入効果を最大化する!フジパンの成功に学ぶ3つのポイント
どんなに優れたツールも、使い方を間違えれば宝の持ち腐れです。フジパンは、AIチャットボットの導入効果を最大化するために、実に堅実で戦略的なアプローチを取りました。そこには、これからAI導入を目指す企業にとって、多くの学びがあります。
【ポイント1】スモールスタートで着実に。まずは総務窓口から
「よし、全社で一気に導入するぞ!」と意気込みたくなる気持ちは分かりますが、フジパンはまず、最も問い合わせが集中していた総務窓口から活用を開始しました。
最初に範囲を限定することで、導入のハードルを下げ、効果測定をしやすくする狙いがあります。ここで得られた成功体験や改善点を元に、次のステップへ展開していく。この「スモールスタート」の考え方は、DX推進の鉄則とも言えます。
【ポイント2】現場の声を反映。本当に「使える」システムへ
導入を決めたのは経営層やDX推進部かもしれませんが、実際にツールを使うのは現場の従業員です。「どんな質問が多いのか」「どんな言葉で検索されているのか」。こうした現場の声を丹念にヒアリングし、AIの学習データに反映させていくプロセスが、本当に「使える」システムを育てる鍵となります。
フジパンの総務部課長心得である横井裕弥氏も、「自動化が進み、担当者の業務負荷軽減につながると期待しています」と語っており、現場の期待の高さが伺えます。この期待に応え続けるためにも、導入後の継続的な改善が不可欠です.
【ポイント3】ゴールは「導入」にあらず。人事領域への展開も見据える
フジパンの挑戦は、まだ始まったばかりです。今回の総務部門での成功を足がかりに、今後は人事関連など、他の部門への展開も視野に入れています。
例えば、人事評価の基準や福利厚生に関する問い合わせなど、より専門的で多岐にわたる質問にも対応できるようになれば、従業員満足度はさらに向上するでしょう。AIチャットボットを単なる「問い合わせ対応ツール」としてではなく、「従業員体験(EX)を向上させるためのプラットフォーム」として捉えている点に、フジパンの先見性が感じられます。
AIチャットボット導入に関するよくある質問
ここまで読んで、AIチャットボットに興味が湧いてきた方も多いのではないでしょうか。ここでは、導入を検討する際によく挙がる質問にお答えします。
Q1. 中小企業でもAIチャットボットは導入できますか?
A1. もちろんです。近年は、フジパンが導入した「HUE チャットボット」のように、比較的安価で導入できるクラウドサービスが増えています。特に、専任のIT担当者を置くのが難しい中小企業こそ、メンテナンスの手間がかからないクラウド型AIチャットボットの恩恵は大きいと言えるでしょう。まずは自社の課題を洗い出し、スモールスタートで試してみてはいかがでしょうか。
Q2. AIの回答精度が心配です。導入前に何を確認すべき?
A2. 非常に重要なポイントですね。確認すべきは、「自社のデータをどれだけ簡単に、そして賢く学習させられるか」という点です。RAG技術のように、既存のドキュメントをアップロードするだけで回答を自動生成できるタイプか、それとも手動でQ&Aを作成し続ける必要があるタイプかでは、運用負荷が大きく異なります。無料トライアルなどを活用し、回答精度のデモンストレーションを依頼することをお勧めします。
Q3. 費用対効果はどのように考えればよいですか?
A3. 問い合わせ対応にかかっている「時間」を「人件費」に換算してみるのが最も分かりやすい方法です。例えば、「1件の問い合わせ対応に平均10分、担当者の時給が2,000円」だと仮定すると、1件あたり約333円のコストがかかっています。フジパンの例のように年間6.3万件を自動化できれば、単純計算で年間約2,100万円ものコスト削減効果が期待できるわけです。これに加えて、担当者がコア業務に集中できることによる生産性向上など、数値化しにくいメリットも考慮に入れるべきでしょう。
まとめ:フジパンの挑戦は、未来の働き方への大きな一歩
最後に、フジパンの挑戦から私たちが学べることを3行でまとめてみましょう。
- 従業員の「困った」に寄り添うことが、全ての始まり。
- 最新AI技術は、多様な働き方を支える強力な武器になる。
- スモールスタートと継続的な改善が、成功への最短ルート。
フジパンのAIチャットボット導入は、単なるITツール導入事例ではありません。それは、従業員一人ひとりの「働きやすさ」を真剣に考え、テクノロジーの力でそれを実現しようとする、未来の企業姿勢そのものです。
あなたの会社には、まだ声になっていない「困った」が眠っていませんか?フジパンの挑戦をヒントに、AIという新しい仲間と共に、未来の働き方への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。