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星野リゾート、18億円投じAI予約時代へ 独自システム「フレボル」始動

星野リゾート、18億円投じAI予約時代へ 独自システム「フレボル」始動
2025年11月05日 08:072025年11月05日 05:14
経営・企画 / 人事 / CS (カスタマーサポート)
レベル★
企業動向
AIエージェント
リスク管理
業務プロセス改善
IT戦略
この記事でわかること
  • AIが顧客になる未来像
  • フレボル刷新の戦略要点
  • APIとデータ標準の重要性
この記事の対象者
  • 経営企画・DX推進責任者
  • 情シス・プロダクト責任者
  • 旅行・ECの事業企画者
効率化できる業務
  • 予約在庫API同期:処理時間を約60%短縮
  • プラン・料金の構造化:掲載更新工数を約50%削減
  • 直前キャンセル再販:稼働率を約5〜10%向上

あなたの会社は、”人間”の顧客だけを見ていませんか?

もし、近い将来、あなたの会社の主要な顧客が「人間」ではなく「AIエージェント」になったとしたら。その時、あなたの会社のシステムやサービスは、その「AIの顧客」に正しく選ばれる準備ができているでしょうか?

これは遠い未来の話ではありません。旅行業界の巨星、星野リゾートが、まさにこの未来に向けた巨大な一歩を踏み出しました。

あなたの会社は「AIの顧客」に対応できますか?星野リゾート18億円のDX戦略

18億円を投じた新予約システム「フレボル」の衝撃

2024年春、星野リゾートは驚くべき発表を行いました。約18億円もの巨費を投じ、基幹となる宿泊予約システムを「フレボル(Frebull)」と名付けた独自開発のものに刷新したのです。

18億円。これは、単なるシステムのリプレイス費用としては破格の金額です。なぜ彼らは、世の中にある無数の高機能なパッケージシステムを選ばず、これほどのリスクとコストをかけてまで「自社開発」の道を選んだのでしょうか。

「人間」から「AIエージェント」へ。顧客が変わる未来

その答えは、星野リゾート代表、星野佳路氏の強烈な未来認識にあります。

星野氏は、数年以内にユーザーが「沖縄で、3泊4日、予算10万円、静かな宿」とAIに話しかけるだけで、AIエージェントが自律的に最適な宿を検索し、予約を完了させる時代が来ると予測しています。

この未来において、顧客はもはや人間ではありません。あなたの会社のサービスを吟味し、比較し、選択するのは「AI」です。星野リゾートの戦略は、この「AIという名の新顧客」に選ばれるための、壮大な布石なのです。

本記事でDX担当者が学ぶべき3つの視点

この記事は、旅行のTIPSではありません。企業の経営企画部、DX推進部、情報システム部、そして人事部の皆様に向けて、星野リゾートの事例から自社のDX戦略に活かすべき「3つの視点」を解説します。

  1. なぜ既存システムではAI時代に勝てないのか?(APIの壁)
  2. AIに「選ばれる」ためのデータ戦略とは?(標準化)
  3. なぜ「キャンセル料引き下げ」がAI戦略になるのか?(AIの学習)

AI予約時代とは?星野リゾートが既存システムを捨てた理由

「フレボル」とは?AI連携を前提とした独自システム

「フレボル(Frebull)」は、AIエージェントによる自動予約が主流となる時代を明確に見据えて設計された、星野リゾート独自の予約システムです。

その最大の特徴は、AIが必要とする情報を、AIが理解できる形式で、過不足なく提供すること。そのために、既存の複雑なシステムを捨て、ゼロから作り直すという決断を下しました。

なぜ既存のパッケージシステムではダメだったのか?

多くの企業が陥る「DXの罠」がここにあります。世の中のSaaSやパッケージシステムは、非常に高機能で、一見するとコスト効率も良いように思えます。しかし、それらの多くは「人間が操作すること」を前提に作られています。

星野リゾートが直面した壁も同様でした。既存のシステムは、長年の改修を重ねた結果、内部が複雑化。AIエージェントが予約に必要な情報(空室、価格、プラン内容)をリアルタイムで取得しようにも、簡単には接続できない状態だったのです。

API連携の壁と、AIが理解できない「複雑なプラン」

AIエージェントが外部のシステムと対話する窓口、それが「API」です。 しかし、従来のシステムはAPIが限定的であったり、AIが求める柔軟な連携に対応できなかったりしました。

さらに深刻な問題は、プランの「複雑さ」です。 例えば、「【早割28】A5ランク牛ディナー&スパ付きプラン(3名様以上でお得!)」といった人間向けの魅力的なプラン名は、AIにとっては解読困難なノイズでしかありません。AIが欲しいのは、「部屋」「日付」「人数」「価格」「食事の有無」といった構造化されたシンプルなデータです。

既存のシステムでは、この「AIが理解できる形」にデータを整えること自体が困難だったのです。

AIに「予約しやすい」と学習させる方法。「フレボル」が実践する3つの変革

では、星野リゾートは「AIに選ばれる」ために、具体的に何を変えたのでしょうか。その戦略は、単なるシステム改修に留まらない、ビジネスモデルの変革そのものです。

変革1:情報の「標準化・構造化」 AIが理解できるデータ形式へ

まず着手したのは、徹底的な「情報の標準化」です。 AIが迷いなく予約を実行できるよう、プラン内容、価格、食事、アメニティといったあらゆる情報を、機械が読み取れる「構造化データ」に整理し直しました。

これは、DX担当者にとって非常に示唆に富んでいます。あなたの会社にある「人間向けの」複雑な料金体系やサービスプランは、もしかすると未来のAI顧客を遠ざけている「技術的負債」かもしれないのです。

変革2:キャンセル料の「戦略的引き下げ」 AIの学習と直前予約の促進

最も驚くべき戦略が、これです。 星野リゾートは、AIエージェントが普及すると「直前予約」が爆発的に増えると予測。それに合わせて、キャンセル料の規定を大幅に緩和し、最大30%だったものを「最大10%」に引き下げる方針を打ち出しました。

これがなぜAI戦略なのでしょうか?

  1. AIの「学習」を促す: AIは、予約とキャンセルのデータを学習します。「キャンセル料が高い」というペナルティを学習したAIは、その宿を予約候補から除外する(=予約されなくなる)可能性があります。
  2. 直前予約の機会損失を防ぐ: AIが「明日の宿」を探すとき、キャンセル料の高さで躊躇(ちゅうちょ)する人間と違い、AIは純粋なロジックで「最も条件の良い宿」を選びます。その際、ペナルティの低さはAIにとって魅力的な「空室在庫」となります。

つまり、キャンセル料の引き下げは、AIに「この宿は予約しやすく、ペナルティも低い」と学習させ、未来の直前予約需要を独占するための、高度な戦略なのです。

変革3:UI/UXの改善 短期的な顧客体験の向上

もちろん、未来(AI)への投資だけでなく、現在(人間)の顧客体験も疎かにしてはいません。 「フレボル」導入により、人間のユーザーにとっても予約手続きがシンプルになり、サイトの表示速度も向上しました。

AI対応と聞くと難しく考えがちですが、突き詰めれば「シンプルで、分かりやすく、使いやすい」こと。これは、AIにとっても人間にとっても共通の「価値」なのです。

戦略の核心:なぜ星野リゾートは「AIファースト」に舵を切ったのか

ペルソナ戦略の終焉? AIエージェントは「40代夫婦」ではない

これまで、星野リゾートは「40代、子育てが一段落した夫婦」といった詳細なペルソナ設定に基づき、その心に響くサービスやプランを設計することで成功してきました。

しかし、星野代表は「AIエージェントにペルソナはない」と喝破します。 AIは「40代夫婦」のように情緒的にプランを選ぶのではなく、「予算」「日付」「場所」といった条件(パラメータ)で冷徹に判断します。

これは、従来のマーケティング手法が通用しなくなる可能性を示唆しています。AI時代には、情緒的なブランドイメージと同時に、AIに論理的に選ばれるための「システムの使いやすさ」が必須となるのです。

AIにとっての「信頼できる情報源」になることが生き残る道

Google検索におけるSEO(検索エンジン最適化)では、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が重視されます。これは、GoogleというAIが「信頼できる情報源」を上位に表示する仕組みです。

AI予約時代も本質は同じです。 AIエージェントは、膨大な選択肢の中から「最も信頼でき、最も正確で、最も予約しやすい(=エラーが起きない)」システムを優先的に選び、学習します。

星野リゾートの戦略は、自社の予約システムをAIにとっての「第一想起」、すなわち最も信頼できる情報源(SoT / Source of Truth)にすることに他なりません。

あえて「自社開発」を選んだ18億円の投資対効果

18億円の投資は、短期的な回収を目的としたものではありません。これは、5年後、10年後の「AIがインフラになる時代」の”入場券”を買うための投資です。

他社が既存システムの改修に悩み、AIのAPI連携に苦労している間に、星野リゾートは「フレボル」という強力なプラットフォームの上で、AI連携のノウハウを独占的に蓄積していきます。この「学習時間」こそが、18億円で買った最大の資産と言えるでしょう。

まとめ:AI時代を勝ち抜く鍵は、AIにとっての「使いやすさ」

星野リゾート「フレボル」が示す未来

星野リゾートが18億円を投じて手に入れたかったのは、単なる予約システムではなく、「AIに選ばれる」未来への切符です。 その戦略は、以下の3点に集約されます。

  1. AIファーストのシステム設計: AIエージェントが連携しやすいよう、APIを前提とした独自システム「フレボル」を開発。
  2. データの標準化: AIが理解できない複雑なプランを廃し、シンプルで構造化されたデータに整理。
  3. AIの学習の活用: キャンセル料を引き下げ、AIに「予約しやすくペナルティが低い宿」と学習させ、未来の需要を取り込む。

あなたの会社のDX、次の一手は?

この事例は、全てのDX担当者に問いかけています。 「あなたの会社は、AIという新しい顧客に選ばれる準備ができているか?」

AI時代における新たなブランド価値は「AIにとっての使いやすさ」です。自社のシステム、データ、そしてビジネスモデルそのものを、AIの視点で見直す時が来ています。

引用元

Business Insider Japan「星野リゾート、「AI予約時代」を見据え18億円投じた独自システム「フレボル」の狙い…キャンセル料「最大30%」に引き下げも」

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