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企業のDX推進部、そして日々プレゼンテーション資料を作成する全てのビジネスパーソンの皆様へ。
資料作成において、最も時間がかかり、そして最も非生産的な作業は何でしょうか。それは、「フォントのサイズ調整」「画像の配置」「図形の装飾」といった、本来のメッセージとは関係のないデザインの微調整ではないでしょうか。
「PowerPointで資料を作成すると、デザインに凝りすぎて結局本質的な内容がおろそかになる…」 「CopilotやGamma AIなどのAIツールを使っても、クオリティがいまいちで、結局手直しが必要になる…」
私たちは長らく、資料作成の「時間」と「クオリティ」というジレンマに悩まされてきました。しかし、この壁を打ち破る、「AI(Claude)とマークダウン(Marp)を組み合わせた」新しい資料作成手法が、SNSを中心に話題となっています。
この方法は、AIの生成能力とマークダウンのシンプルさを融合させることで、デザインの統一性と作成スピードを両立させます。本稿では、このMarpとClaudeを使った資料作成の全手順と、「業務レベルで使えるクオリティ」に引き上げるための具体的な修正テクニックを徹底解説します。
従来のAI資料作成の限界

Copilot Pro(有料版)やGamma AIといったツールも資料作成機能を提供していますが、出力される資料は「なんとなく物足りない」と感じられるケースが多く、結局細かな手直しが必要になってしまうという課題がありました。これは、AIが「デザインのセンス」や「統一感」といった情緒的・美的要素を完全に再現しきれないためです。
Marpの技術的優位性:デザインと文書構造の分離
Marp(Markdown Presentation Ecosystem)は、マークダウン(Markdown)記法を使ってシンプルにプレゼンテーションを作成できるよう設計された仕組みです。マークダウンは、見出しに「#」、箇条書きに「-」といった簡潔な記法を用いるため、ユーザーは複雑なスライド編集操作に煩わされることなく、内容そのものの構成に集中できます。
また、Marpの大きな特徴は、デザインの統一性にあります。一度テーマを設定すれば、スライド全体のレイアウトや配色が自動的に整えられるため、個々のユーザーがデザイン調整に時間をかける必要がありません。これにより、「文書構造」と「デザイン」という要素を切り離し、手作業による見た目のばらつきを防ぐことができます。
シンプルなテキストベースの記述で、美しく一貫性のあるプレゼン資料を作成できる点が、Marpが開発者やリサーチャー、教育現場で支持を集めている理由です。
Claudeの強み:マークダウンコードの正確な生成
Claudeは、その圧倒的なコンテキストウィンドウ(文脈理解能力)と高い論理的思考能力によって、マークダウン(Markdown)記法に基づいた複雑なコードの生成を得意としています。
特に注目すべきは、AIとマークダウンの相性の良さです。人間がPowerPointで手作業によるデザイン調整を行うよりも、Claudeに「Marpのルールに従ってスライドコードを書いて」と指示するほうが、短時間で統一感のある高品質な資料を生成できます。レイアウトのばらつきがなく、一貫したデザインが保たれる点も大きなメリットです。
生成された資料はすべてテキストベースで構成されているため、編集作業もスムーズです。「このスライドの内容を変更して」「フォントサイズを小さくして」など、自然言語でClaudeに指示を出すだけで即座に修正が反映されます。これにより、AIを活用した資料作成がこれまで以上に柔軟で効率的なものとなっています。
MarpとClaudeを使ったスライド作成の具体的な手順(HowTo)
この効率的な資料作成は、以下のシンプルなステップで実行できます。
1. 開発環境の整備:VS CodeとMarp拡張機能の導入
まず、マークダウンコードをプレビュー・出力するための開発環境を準備します。
- Visual Studio Code(VS Code)のダウンロード: Microsoftが提供するテキストエディター「VS Code」をGoogleなどで検索し、ダウンロード・インストールします。
- Marp for VS Codeの導入: VS Codeを開き、左側のサイドバーにある「拡張機能」のアイコンをクリックします。検索ボックスにmarpと入力し、Marp for VS Codeという拡張機能をインストールします。
2. Claudeへの「Marp形式」プロンプト設計
資料にしたい内容をClaudeに伝え、Marpのルールに従った出力を指示します。
- プロンプト例:
- 「Marp形式を使用して、魅力的でリッチなインフォグラフィックスのスライドを作成してください。」
- 【応用】「背景にはUnsplash(無料画像素材サービス)から無料で利用できるものを使用し、必ず表示させてください。」
- 内容の提供: 依頼文の下に、スライドに含めたい具体的な内容(例:Chat GPTの回答精度が上がるフレーズ)のテキストを渡します。
3. マークダウンコードのペーストとプレビュー
Claudeが生成したマークダウン形式のテキストをVS Codeに貼り付けます。
- ファイルの保存: VS Codeで「新しいテキストファイル」を選択し、ファイル名を「.md」という拡張子(例:test.md)で保存します。マークダウンファイルとして認識させるためです。
- コードの貼り付けとプレビュー: Claudeのコードを貼り付けた後、VS Codeの右上にある「3等分にするようなマーク(プレビューアイコン)」をクリックすると、資料がHTMLスライド形式でプレビュー表示されます。
4. 資料のエクスポート(出力)
完成した資料は、様々な形式で出力できます。
- エクスポート: VS Codeのメニューから「ファイル」をクリックし、「エクスポートサイトデック」を選択します。
- 出力形式: PDF、HTML、PNG、JPEGといった形式で出力できます。動画では、PowerPoint形式は「微妙」であると指摘されていますが、PDFやHTML形式であれば、Webスライドとしてそのまま利用したり、Canvaなどのデザインツールに取り込んだりすることが可能です。
業務で活かすためのメリットと「AIの崩れ」修正テクニック
Marp + Claudeの3つのメリット
- シンプルで統一されたデザイン: 複雑なデザインはできませんが、シンプルで統一感のあるデザインを簡単に実現できます。
- 迅速な編集と変更: 資料がテキストベースであるため、修正や変更がテキストエディターで簡単にでき、AIによる修正指示も容易です。
- バージョン管理が容易: テキストベースなので、GitやGitHubといったバージョン管理システムとの相性が良く、複数人での管理や変更履歴の追跡が非常に楽になります。
「AIポン出し」の精度を100%に近づける修正テクニック
Claudeが一発で出力した資料は、稀にレイアウトが崩れたり、不要なタグが含まれたりすることがあります。この「AIの崩れ」を解消する手動調整のテクニックが重要です。
- 崩れの修正指示: プレビューで中央揃えになっていない、文字サイズが大きすぎるといった崩れを発見したら、再度Claudeに対し、「全て中央揃えにして、H1タグのフォントサイズを小さくしてください」といった具体的な修正指示を出します。
- 不要タグの一括削除: Claudeが生成するマークダウンコードに<DIV class=...>のような不必要なHTMLタグが含まれている場合があります。これをそのまま残すと表示崩れの原因となるため、VS Codeの「検索・置換」機能を使い、これらの不要なタグを一括で削除(空白に置換)します。
- Canvaでの最終仕上げ: PDFとして出力した後、Canvaなどのデザインソフトにインポートすることで、AIには難しい「ちょっとしたグラフィックの追加」や「飾り付け」といったデザインの自由度を高めることができます。
結論:AI時代の「文章構造集中型」資料作成術
MarpとClaudeを使った資料作成術は、「時間をデザインの調整ではなく、本質的な内容の構築に使う」という、AI時代の「文章構造集中型」の新しいワークフローを確立します。
AIが「見た目の整形」と「骨格の作成」という定型的な作業を担い、人間が「メッセージの本質」と「最終的な品質チェック」という高付加価値な業務に集中する。
このAIとマークダウンの協業こそが、資料作成における「非効率の壁」を打ち破り、迅速かつ高品質な情報共有を実現する、最も実践的で有効なDX戦略の一つです。
Q&A: Marpと資料作成に関するよくある質問
Q1. マークダウン記法を全く知らない初心者でも使えますか?
はい、基本的に可能です。マークダウンは、他のプログラミング言語と比べて圧倒的に簡単であり、資料作成に必要な構文(見出し、箇条書きなど)はすぐに習得できます。また、Claudeがマークダウン形式でコードを生成してくれるため、人間は「コードの構造」ではなく「文章の内容」に集中できます。
Q2. Marpで作成したスライドはPowerPoint形式に変換して使えますか?
MarpはHTML、PDF、PNG、JPEGといった形式へのエクスポートに対応していますが、PowerPoint形式への変換は可能ですが、動画の事例では「微妙」であると指摘されています。デザインの再現性や編集の自由度を考慮すると、PDFとして出力した後、Canvaなどのツールに取り込んで調整するか、HTMLスライドとしてWebブラウザで直接利用するのが最も推奨される活用方法です。
Q3. Marpを使った資料作成で、複数人での同時編集は可能ですか?
複数人での同時編集は、現状のMarpの仕組みでは不向きです。Marpは基本的にテキストファイル(.md)として管理されるため、同時編集には競合(コンフリクト)が生じる可能性があります。しかし、GitやGitHubといったバージョン管理システムを併用することで、変更履歴の管理や統合が容易になり、非同期での協業は可能です。
引用元
Youtube KEITO【AI&WEB ch】「【凄いAI活用術】MarpとClaudeを使って業務レベルで使えるスライド資料を作成する方法【効率化】」
