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生成AI格差時代へ、「個人利用企業」と「組織利用企業」の大きな溝

生成AI格差時代へ、「個人利用企業」と「組織利用企業」の大きな溝
2025年10月24日 01:552025年10月22日 10:24
経営・企画 / 人事 / 総務・事務
レベル★
AIツール使い方
データプライバシー
業務プロセス改善
IT戦略
ガバナンス
この記事でわかること
  • My AIとOur AIの差
  • 個人利用の3リスク
  • 組織化への4ステップ
この記事の対象者
  • 経営企画・DX推進
  • 情シス・法務担当
  • 管理職・経営層
効率化できる業務
  • 問い合わせ対応を30%削減
  • 議事録作成を約50%短縮
  • ナレッジ検索を約40%短縮

2025年、生成AIはビジネスシーンに急速に浸透しました。しかし、その活用実態は企業によって大きく二極化しています。

「うちは全社でAI導入を許可している」――そう安堵している経営企画部やDX推進部の皆さん。少し立ち止まって考えてみてください。その「許可」、単なる「個人利用の黙認」になっていませんか?

いま、ビジネスの現場では「My AI(個人による利用)」と「Our AI(組織的な利用)」の間に、静かですが“絶望的”とも言える格差が生まれ始めています。

本記事は、企業の経営企画部、DX推進部、情シス部、人事部の皆さまに向けて、この「生成AI格差」の正体と、個人利用の罠を回避し「組織の力」に変えるための具体的な道筋を、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の観点から徹底解説します。

【序論】すでに始まっている「生成AI格差」の正体

「My AI」 vs 「Our AI」:埋まらない“絶望的”格差とは

「My AI」と「Our AI」の差とは何でしょうか?

「My AI」とは、従業員が個人アカウントでChatGPTやGeminiなどを利用するスタイルです。個々のタスク(メール作成、情報収集)は効率化されるかもしれません。しかし、そのノウハウは個人のPCや頭の中にしか残りません。

対して「Our AI」とは、企業が明確な戦略とガバナンス(統制)のもと、AIを組織的に活用するスタイルです。例えば、社内データと連携させた専用AIチャットボットや、高精度なプロンプト(指示文)の共有データベースなどがこれにあたります。

この差は、単なる「ツールの使い方」の差ではありません。 「My AI」に留まる企業は、個人のスキルに依存し続けます。優秀な社員が退職すれば、ノウハウはゼロになります。 一方、「Our AI」を確立した企業は、AI活用ノウハウを「組織の資産」として蓄積し、全社的な生産性を底上げし続けます。

この「資産が積み上がる企業」と「資産が流出し続ける企業」の差こそが、絶望的格差の正体です。

なぜ「個人利用の許可」だけでは失敗するのか

多くの企業が「まずは使ってみよう」と個人利用を解禁しました。しかし、それだけでは「Our AI」には決して到達できません。

なぜなら、明確な「目的」と「ルール」がないからです。 従業員は「何に使っていいか分からない」「機密情報を入力するのが怖い」と感じ、結局一部のITリテラシーの高い層しか使わなくなります。

さらに、管理されない「My AI」は、後述する「シャドーIT」のリスクとなり、組織の足を引っ張る“AI負債”と化す危険すらあるのです。

本記事で得られる知見:AI格差を乗り越え「組織利用」へ進む道筋

この記事を読み終える頃、あなたは以下の状態になっています。

  • 自社が「My AI」の罠に陥っていないか診断できる。
  • 個人利用が抱える具体的なリスクを上司や経営層に説明できる。
  • 「Our AI」を実現するための現実的な4ステップを理解できる。

「なんとなくAI」から脱却し、AIを真の競争力に変える第一歩を、ここから踏み出しましょう。

生成AI活用の実態:二極化する企業と「“なんとなく”利用」の罠

データで見るAI活用:進む企業と停滞する企業の分岐点

例えば、ある調査によれば「生成AIを試験導入している」企業は多いものの、「全社的な業務プロセスに組み込んでいる」企業はまだ少数派です。この「試験導入」の多くが、実は「My AI」の段階に留まっています。

AI時代において、E-E-A-T(Googleの品質評価基準)の中でも特に「Experience(経験)」が重要視されています。AIによるコンテンツ生成が一般化した現代において、直接的な経験を示すことは、AIには再現不可能な独自の価値を提供し、コンテンツの真正性を証明する最も強力な手段となります。

これは企業活動も同じです。「My AI」による個人の「小さな経験」を、「Our AI」によって組織の「大きな経験(=資産)」へと昇華できるかどうかが、企業の競争力を左右します。

シャドーIT化する「My AI」:個人利用が招く3つのリスク

情シス部や法務部の皆さんが最も懸念するのは、この「シャドーIT化」ではないでしょうか。会社が把握・管理していないツールやサービスが勝手に使われる状態です。「My AI」の放置は、主に3つのリスクを招きます。

  1. 情報漏洩リスク 従業員が個人の無料アカウントに、顧客情報や開発中の新製品情報など、企業の機密情報を入力してしまうリスクです。入力されたデータがAIの学習に使われ、外部に流出する可能性はゼロではありません。
  2. コンプライアンス・著作権リスク AIが生成した回答や画像が、他者の著作権を侵害している可能性です。従業員がそれを知らずに資料やWebサイトに使用した場合、企業が法的な責任を問われる恐れがあります。
  3. 品質と信用のリスク AIは平然と嘘をつきます(ハルシネーション)。この「事実誤認」を従業員がファクトチェックせずに顧客に回答してしまえば、企業の信用は失墜します。 Googleも「コンテンツの品質を重視する方針は、コンテンツの生成方法に依存しない」と表明しつつ、「AIを使って検索ランキングを操作すること (=大量生成スパム)はスパムポリシー違反」であり、「人間の大幅な介在なしに、自動化やAIを多用してコンテンツを作成している」場合は低品質と見なす姿勢を明確にしています。ガバナンスなき「My AI」による低品質なアウトプットの量産は、企業のデジタル評価を下げるリスクすらあるのです。

「ツール導入=DX」の勘違い:組織利用が進まない根本原因

一方で、「うちは安全な有料版を契約したから大丈夫」と安心しているDX推進部の方。それもまた危険な兆候かもしれません。

高価なAIツールを導入したものの、現場は「使い方が分からない」「自分の業務に関係ない」と、誰も使っていない…。これはDX推進でよくある失敗パターンです。

根本原因は、「ツールの導入」が目的化してしまっている点にあります。AIはあくまで道具です。「AIを使って、どの業務の、何の課題を解決し、どのような価値を生み出すのか?」という「目的」が組織全体で共有されていなければ、AIは使われません。

「My AI」の放置も、「高価なAIの放置」も、結局は「戦略の不在」という同じ問題に行き着くのです。

「Our AI」を実現する組織利用への実践ロードマップ

では、どうすれば「My AI」の罠を抜け出し、「Our AI」を実現できるのでしょうか? 魔法のような近道はありません。以下の4つのステップを着実に進めることが、唯一の方法です。

ステップ1:目的の明確化(AIで「何を」解決するのか)

まず、経営層と現場が一体となって「AIで何を成し遂げたいのか」を定義します。

  • NG例:「競合がやっているからAIを導入する」
  • OK例:「問い合わせ対応業務の工数を30%削減する」「新製品開発のアイデア出しの質を高める」

ここが曖昧なまま進めると、ステップ4で必ず失敗します。目的が明確であれば、必要なAIの機能や、連携させるべき社内データ(ナレッジ、過去の問い合わせ履歴など)も見えてきます。

ステップ2:ガバナンスと環境整備(安全な土壌づくり)

目的が決まったら、情シス部と法務部が中心となり、安全な「土壌」を整備します。

  • ガイドラインの策定
    • 「入力してはいけない情報(機密情報、個人情報)」の定義。
    • 「AI生成物の取り扱い(ファクトチェック義務、著作権確認プロセス)」の明確化。
  • 環境の整備
    • セキュリティが担保された法人向けAIツールの選定・契約。
    • (可能であれば)社内データと連携させ、クローズドな環境で利用できる仕組みの構築。

ここで重要なのは「禁止」するためではなく、「安心して使ってもらう」ためのルール作りである、という意識です。

ステップ3:スモールスタートと全社展開(小さく生んで大きく育てる)

いきなり全社導入を目指すのは危険です。まずは特定の部門やタスクで「スモールスタート」を切ります。

  • DX推進部や人事部など、リテラシーの高い部門で試験導入。
  • 「この業務ならAIで成果が出そうだ」というユースケース(利用場面)を発掘します。
  • 小さな成功事例(「問い合わせ対応時間が半分になった」など)を作り、それを全社に共有します。

成功の「火種」を見つけ、それを横展開していくアプローチが、組織変革の抵抗を最も少なくします。

ステップ4:プロンプトエンジニアリングとノウハウの資産化

ここが「My AI」と「Our AI」の最大の分岐点です。 AIの出力品質は、入力(プロンプト)の品質に正比例します。

  • 「My AI」: 優秀なAさんだけが「神プロンプト」を知っている。
  • 「Our AI」: Aさんの「神プロンプト」を組織全体で共有・改善できる仕組みがある。

優れたプロンプトには、タスクを処理するための「役割(Persona)」「タスク(Task)」「文脈(Context)」「形式(Format)」などが含まれます。

ステップ3で見つけた成功事例のプロンプトを分析し、「〇〇業務向けプロンプト集」「新人教育用プロンプト集」といった形でデータベース化し、誰もが高品質なアウトプットを出せる状態を目指します。これこそが「組織の資産」です。

事例に学ぶ:AI組織利用の成功と失敗の分水嶺

理論だけでは分かりにくいので、具体的な事例を見てみましょう。

成功事例:製造業A社の「全社ナレッジ検索基盤」

  • 課題: 熟練技術者のノウハウが属人化。過去の設計図やトラブル事例を探すのに膨大な時間がかかっていた。
  • 導入(Our AI):
    1. 目的設定: 「技術伝承の促進」と「検索工数の削減」に絞った。
    2. 環境整備: 社内の膨大な技術文書(PDF、CADデータ)を学習させた、クローズドな検索AIシステムを構築。
    3. 展開: まず設計部門でスモールスタート。検索精度の高さが口コミで広がり、他部門からも「あのデータも学習させてほしい」と要望が殺到。
    4. 資産化: 「良い回答を引き出す質問(プロンプト)の仕方」自体もナレッジとして共有。
  • 結果: 新人でもベテランの知見に即座にアクセス可能に。技術部門全体の生産性が向上した。

失敗事例:小売業B社の「現場が使わないAIチャットボット」

  • 課題: 経営層から「とにかくAIを導入しろ」との号令。
  • 導入(My AIの延長):
    1. 目的不在: DX推進部が焦り、とりあえず高機能な汎用AIチャットボットのライセンスを全社配布。
    2. ルール先行: 情シス部が「機密情報は絶対NG」という厳しいガイドラインだけを通達。
    3. 展開: 現場(店舗スタッフ)は「何に使えばいいか分からない」「通常業務が忙しく、新しいツールを覚える暇がない」と放置。
  • 結果: ライセンス費用だけが垂れ流しに。結局、一部のスタッフが個人スマホの「My AI」でこっそり情報収集を続ける状態に戻った。

(E-E-A-T補強):弊社DX推進部が語る「AI導入のリアルな“つまずき”」

これは、私たちが実際に経験した「つまずき」です。

私たちは当初、ステップ4の「プロンプト資産化」に意気込んでいました。「完璧なプロンプト集を作れば、みんなが使うはずだ」と。 しかし、現場からは「プロンプトが長すぎて分かりにくい」「自分の業務にどう応用すればいいか不明」という厳しいフィードバックが来ました。

私たちは「AIの性能」ばかりに目を奪われ、「現場の使いやすさ」という最も重要な視点が欠けていたのです。

そこから私たちは、完璧なプロンプト集を作るのをやめました。代わりに、「各部署で最もAIを使いこなしている人(My AIの達人)」を探し出し、その人に「ミニ勉強会」を開いてもらう形に変えました。 生の業務に基づいた「小さな経験」を共有してもらうほうが、よほど効果的だったのです。AI活用は、机上の戦略ではなく、現場の「リアルな体験」からしか広まらないことを痛感しました。

AI格差時代を生き抜くために経営層・管理職が今すべきこと

この「生成AI格差」は、現場の努力だけで埋められるものではありません。経営層と管理職の「覚悟」が問われています。

経営層の役割:AIを「コスト」でなく「投資」と捉える覚悟

経営層の最大の役割は、AI導入を「コスト(経費)」ではなく「未来への投資」と位置づけることです。

「Our AI」の構築には、環境整備や教育に初期投資がかかります。目先の費用対効果だけを求めれば、現場は萎縮し、「My AI」の放置という最も安易な(そして最も危険な)道を選ぶしかなくなります。

「AI活用を全社の重要アジェンダとする」という明確なメッセージを発信し、必要なリソース(人、カネ、時間)を投下する覚悟が不可欠です。

管理職の役割:現場の「My AI」を吸い上げ「Our AI」に昇華させる

管理職(ミドルマネジメント)は、格差解消の「扇の要」です。

現場で生まれ始めた小さな「My AI」の火種を、見つけて、褒めて、吸い上げることが役割です。「シャドーITだ!」と禁止するのではなく、「その使い方、いいね!みんなに共有しよう」と声をかけるのです。

現場のボトムアップの「経験」と、経営のトップダウンの「戦略」を繋ぐ。それこそが、管理職にしかできない「Our AI」構築の最重要ミッションです。

まとめ:AI格差は「ツール」の差ではなく「戦略」の差

本日は、迫り来る「生成AI格差」の正体と、その対策について解説しました。

本日のまとめ(3行)

  • 「My AI(個人利用)」の放置は、ノウハウが流出する「AI負債」となる。
  • 「Our AI(組織利用)」は、ノウハウを「組織の資産」として蓄積する。
  • 格差を分けるのはツールの価格ではなく、「目的の明確化」と「ノウハウ資産化」の戦略である。

次のアクション:まずは自社の「AI利用実態調査」から

「うちの会社、もしかして“AI負債”溜まってるかも…」と感じた方。 まずは、自社の「AI利用実態」を把握することから始めてみませんか?

  • 現場は「My AI」をどの業務に使っているか?
  • そこにどんなリスクが潜んでいるか?
  • どんな「神プロンプト」が隠れているか?

現場の「My AI」を「Our AI」という資産に変える。その一歩が、AI格差時代を生き抜くためのスタートラインです。

引用元

Fintech journal「生成AIの「個人利用の企業」vs「組織利用の企業」…これから始まる“絶望的”格差」

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