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「また、この時間か…」
深夜のオフィスで、一人カタカタと鳴り響くキーボードの音。目の前には、真っ白なPowerPointのスライドが、まるで巨大な壁のように立ちはだかっている。伝えたいことは山ほどあるのに、どう構成すれば響くのか分からない。デザインをいじればいじるほど、なぜか素人っぽくなっていく…。
もし、あなたが営業資料の作成に、かつての私と同じような苦しみを感じているなら、この記事はあなたのためのものです。
こんにちは。普段はAIを活用した事業開発やコンサルティングを行っています。何を隠そう、私自身も最近まで、営業資料というものが存在しませんでした。ありがたいことにご紹介でお仕事をいただくことが多く、作る必要がなかったのです。
しかし、事業を拡大する上で、しっかりとした営業資料は不可欠。そう思い立ち、重い腰を上げたのですが…正直、気が重かった。「ああ、またあのパワポと格闘するのか」と。
でも、今は違います。AIという“相棒”を手に入れたことで、あれだけ苦痛だった資料作成が、驚くほどクリエイティブで、スピーディな時間へと変わりました。
この記事では、巷でよく聞く「AIにキーワードを入れるだけで資料が完成!」といった夢物語ではありません。僕が実際に、これから本当にビジネスの現場で使う営業資料を、AIと一緒に作り上げた「リアルな全記録」をお届けします。
この記事を読み終える頃には、あなたもきっと、AIを魔法の杖ではなく、最高の「副操縦士」として迎え入れたくなっているはずです。
「資料作成、もうウンザリ…」パワポの前でため息をつく、かつての私

少しだけ、私の昔話をさせてください。
「良い営業資料とは何か?」
それは、顧客の心を動かし、課題を解決し、未来を共に歩みたいと思わせる「物語」です。頭では分かっているんです。でも、いざPowerPointを開くと、私たちの現実はどうでしょうか?
- 構成の迷宮:「会社概要から?それとも課題提起から?」「実績はどこで見せるのが効果的?」…考えるだけで1時間が経過。
- デザインの沼:「このフォント、なんか違う…」「この配色、センスないかな?」テンプレートをいじり回し、気づけばドツボに。
- 果てしないテキスト入力:決まった構成に、ひたすら文字を流し込む。創造性のかけらもない、ただの「作業」。
私たちは、顧客に届けるべき「物語の中身」を考える時間よりも、資料の「体裁」を整える時間に、あまりにも多くのエネルギーを奪われてしまっているのではないでしょうか。
「もっと、本質的なことに時間を使いたい!」
その叫びこそが、今回の挑戦の出発点でした。
巷のAI万能論に物申す!「AIに丸投げ」がむしろ失敗への近道である理由
「AI 営業資料 作成」と検索すれば、夢のようなツールやサービスがたくさん見つかります。しかし、ここで一つ、声を大にして言いたいことがあります。
AIに「丸投げ」しようと思った瞬間、そのプロジェクトは失敗します。
なぜか?理由はシンプルです。
AIはあなたの会社の「専門家」ではない
最新のAIは、確かに驚くほど賢いです。一般的なビジネス知識や、優れたプレゼンテーションの型(パターン)も大量に学習しています。
しかし、AIはあなたの会社の「魂」を知りません。
- 創業から今日まで、どんな想いで事業を続けてきたのか。
- 目の前のお客様が、夜も眠れないほど悩んでいる本当の痛みは何なのか。
- あなたのチームのメンバーが持つ、誰にも負けない情熱とスキルは何か。
これらは、AIがウェブ上のデータをどれだけ学習しても、決してたどり着けない領域です。AIが生成する「それっぽい」言葉は、どこか薄っぺらく、人の心を揺さぶる熱量を欠いてしまいます。
AIは「操縦士」ではなく、あくまで優秀な「副操縦士」
Microsoft社が自社のAIサービスを「Copilot(副操縦士)」と名付けたのは、まさに慧眼だと思います。
飛行機を目的地まで安全に導く最終的な責任は、機長(操縦士)である人間にあります。副操縦士は、計器のチェック、通信、複雑な計算など、機長の負担を軽減し、より重要な判断に集中させるためのサポート役です。
資料作成も同じです。
- 操縦士(あなた):誰に、何を伝え、どう動いてほしいのか。資料の核となる戦略やメッセージを考える。
- 副操縦士(AI):構成案の壁打ち、デザインの自動生成、定型文の作成など、思考を加速させ、作業を効率化する。
この役割分担を理解することこそが、AI時代に「本当に使える」資料を生み出すための、たった一つの、しかし最も重要な鍵なのです。
実録!AIと人間の二人三脚で作る、次世代の営業資料作成術【4ステップで解説】
お待たせしました。ここからは、私が実際に営業資料を作り上げたプロセスを、思考の過程も含めて、包み隠さずお見せします。
今回、私の「副操縦士」として活躍してくれたのは、以下の3つのツールです。
- Notion:思考を整理し、下書きを作るためのデジタルノート
- ChatGPT:構成案の壁打ちとアイデア出しのパートナー
- Gamma:文章を美しいスライドに自動変換するAIプレゼンツール
さあ、AIとの二人三脚の旅へ、一緒に出かけましょう。
ステップ1:【人間】思考の骨組みは、まず自分の言葉で書き出す (Notion活用)
意外に思われるかもしれませんが、最初のステップは「AIに触らない」ことです。
まずはNotionを開き、真っ白なページに、営業資料に必要な要素を、思いつくままに書き出していきます。これは、AIに「何をさせるか」を明確にするための、非常に重要な「作戦会議」です。
私が実際に書き出した項目は、こんな感じでした。
- 会社概要
- 代表メッセージ
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
- メンバー紹介
- 私たちが解決したい社会課題
- 事業内容(研修セミナー、受託開発、顧問事業…)
- 私たちの独自の強み
- 料金体系
- 過去の実績
- お問い合わせ先
ポイントは、完璧を目指さないこと。「これは後でいいや」とか「どう書こうかな」と悩む必要はありません。マークダウン形式(「#」を見出しにするなど)で、箇条書きレベルで十分です。
この段階で重要なのは、「AIに考えてもらうこと」ではなく、「自分が伝えたいこと」を棚卸しすること。資料の背骨となる部分は、あなた自身の言葉で組み上げるのです。
ステップ2:【AI x 人間】最強の壁打ち相手、ChatGPTで構成案を磨き上げる
さて、自分の頭の中にある材料が出揃ったら、いよいよAIの出番です。ここで登場するのが、ご存知ChatGPT。
彼(彼女?)には、「最高の営業コンサルタント」になってもらいます。
私が実際にChatGPTに投げかけた質問は、非常にシンプルです。
「優れた営業資料の構成要素について、一般的なフレームワークを教えてください。」
すると、ChatGPTは即座に、以下のような構成案を提示してくれました。
- タイトルと導入:ターゲットの注意を引き、課題への共感を示す。
- 問題提起:顧客が抱える具体的な問題を明確にする。
- 解決策の提示:その問題を、自社の製品/サービスがどう解決するのかを提示。
- 導入事例/証拠:実際に成功した顧客の事例やデータを紹介。
- 価格とプラン:透明性のある料金体系を提示。
- 会社紹介とチーム:信頼性を担保する。
- 次のステップ/CTA:具体的な行動を促す。
素晴らしい。まさに王道の構成です。
ここで、ステップ1で書き出した「自分の伝えたいことリスト」と、ChatGPTが提示した「王道のフレームワーク」を見比べます。
「なるほど、僕が考えていた『事業内容』は、『解決策の提示』の部分だな」
「『実績』は『導入事例/証拠』として、もっと具体的に見せた方が響きそうだ」
「冒頭に、お客様が抱える『問題提起』をしっかり入れるのを忘れていたな…!」
このように、AIの提案を鵜呑みにするのではなく、あくまで「たたき台」として、自分の考えと融合させていく。この「壁打ち」作業こそが、資料のクオリティを飛躍的に高めるのです。
この壁打ちを経て、ステップ1の箇条書きを、より洗練された構成案へと並び替え、肉付けしていきます。
ステップ3:【AI】魔法の3分間!文章を絶品スライドに自動変換する「Gamma」の実力
構成案が固まり、各スライドで伝えたい内容の文章(下書き)が完成したら、いよいよクライマックスです。
ここで登場するのが、AIプレゼンテーションツール「Gamma」。
正直に言って、Gammaを知ってしまったら、もうPowerPointでいちからデザインを組む気にはなれません。それほどの衝撃でした。
使い方は、信じられないほど簡単です。
- Gammaを開き、「テキストを貼り付けて生成」を選択。
- Notionで作成した下書き(マークダウン形式)を、そのままコピー&ペースト。
- 生成ボタンをクリック!
すると、どうでしょう。
Gammaが文章構造を瞬時に解析し、それぞれの見出しをスライドタイトルに、本文を箇条書きや段落に、自動でレイアウトしていきます。
待つこと、およそ3分。
先ほどまでただのテキストの羅列だった私の下書きが、統一感のあるデザイン、適切なアイコン、そしてAIが生成した美しいイメージ画像と共に、洗練されたプレゼンテーション資料として生まれ変わったのです。
「あの、デザインに悩んでいた時間は、一体何だったんだ…」
思わず、そう声が漏れてしまいました。
もちろん、テーマ(デザインの雰囲気)は、シックなものからポップなものまで、後から何度でもワンクリックで変更可能です。会社のブランドイメージに合ったものを、いくつか試してみると良いでしょう。
ステップ4:【人間】AIの仕事を100点満点にする、愛ある「手直し」
さて、Gammaが生成したスライドは、正直なところ「85点」くらいの出来栄えです。このままでも十分に通用するレベルですが、私たちは「本当に使える」資料を目指しています。
最後の15点を加えるのが、操縦士である「人間」の役割です。
AIが作ったスライドを一枚一枚めくりながら、最後の仕上げをしていきます。
- 言葉の微調整:AIが選んだ言葉が、少しだけニュアンスが違う場合、自分の言葉に修正します。特に、会社の理念やサービスの強みを語る部分は、熱量が伝わる言葉を選びたいものです。
- レイアウトの調整:「この図は、もう少し右にあった方が見やすいな」「ここのテキストは、改行を入れたい」といった、細かな調整を行います。Gammaは直感的な操作で、簡単にレイアウト変更が可能です。
- 画像の差し替え:AIが生成した画像がイメージと違う場合、自分で用意した画像(例えば、メンバーの顔写真や、実際のサービス画面など)に差し替えます。
この「手直し」の時間は、私の場合、30分もかかりませんでした。
考えてみてください。構成作成からデザイン、テキスト流し込みまで、従来なら丸1日かかっていた作業が、たったこれだけの時間で、しかもプロ級のクオリティで完成するのです。
これこそが、AIを「副操縦士」として使いこなす、最大のメリットと言えるでしょう。
なぜこの方法が「本当に使える」のか?AI活用の新常識
今回ご紹介した「AIと人間の二人三脚」による資料作成術。この方法がなぜ、単なる時短テクニックに留まらない、本質的な価値を持つのかを、少しだけ深掘りさせてください。
「時間」と「クオリティ」の二兎を追い、両方を得る
多くの場合、「時間」と「クオリティ」はトレードオフの関係にあります。時間をかければ質は上がるが、早く作ろうとすれば質は下がる。これが常識でした。
しかし、AIはこの常識を覆します。
- AI:デザイン、レイアウト、定型作業といった「時間をかければ誰でもできる作業」を圧倒的なスピードで片付ける。
- 人間:AIが生み出した時間を使って、資料の核となる戦略、顧客に響く言葉、説得力のあるデータといった「人間にしかできない思考」に全集中する。
結果として、「短時間で、かつてないほど質の高い資料を作る」という、夢のような芸当が可能になるのです。
あなたは「考える」ことに集中できる
この手法の最も素晴らしい点は、あなたを「退屈な作業」から解放し、「創造的な思考」に集中させてくれることです。
もう、図形の整列や色の組み合わせに悩む必要はありません。
あなたはただ、顧客のことだけを考えればいい。どうすれば、この資料で彼らの心を動かせるだろうか。どうすれば、私たちの情熱が伝わるだろうか。
AIが優秀なアシスタントとして、あなたの思考をリアルタイムで形にしてくれる。これはもはや、単なる業務効率化ではありません。「働き方の革命」と呼ぶにふさわしい変化ではないでしょうか。
さあ、あなたもAIを「副操縦士」に。今日から始めるためのQ&A
「自分にもできるかな…」そう感じているあなたのために、よくある質問をまとめてみました。
Q1. 紹介されたツールは、本当に無料で使える?
はい、今回ご紹介したNotion, ChatGPT, Gammaは、いずれも無料プランから始めることができます。
特にGammaは、無料プランでもかなりの回数スライドを生成できるクレジットが付与されるので、まずは気軽に試してみることを強くお勧めします。一度、あの「魔法の3分間」を体験してみてください。
Q2. PCスキルに自信がなくても大丈夫?
全く問題ありません。PowerPointのように複雑な機能やメニューを覚える必要は、一切ありませんでした。
特にGammaは、ウェブサイトを閲覧するのと同じくらい直感的に操作できます。文章をコピー&ペーストして、ボタンをクリックするだけ。もしあなたがこの記事を読めているなら、間違いなく使いこなせます。
Q3. 会社の機密情報を入力しても安全?
これは非常に重要な点です。結論から言うと、会社の機密情報や、公開前の重要な情報をAIに入力する際は、細心の注意が必要です。
多くのAIサービスでは、入力されたデータが学習に使われる可能性があります。会社のセキュリティポリシーを必ず確認し、許可された範囲で利用しましょう。
今回のような営業資料の場合、会社概要やサービス内容など、もともと公開されている情報をベースに作成し、機密性の高い実績データなどは、AIで生成した後に手動で追記するといった使い分けが賢明です。
まとめ:AIは魔法の杖ではない。しかし、最高のパートナーになり得る
AIによる営業資料作成のリアルな旅、いかがでしたでしょうか。
お分かりいただけた通り、AIは私たちの仕事を奪う「敵」でもなければ、何でも願いを叶えてくれる「魔法の杖」でもありません。
AIは、私たちの能力を拡張し、私たちをより創造的な存在へと引き上げてくれる、最高の「パートナー」であり「副操縦士」なのです。
操縦桿を握るのは、いつだってあなた自身です。
あなたの情熱、経験、顧客への想いこそが、資料に魂を吹き込む唯一のエネルギーです。
AIに面倒なことは全部任せて、あなたは、あなたにしかできない「考える仕事」に、もっと夢中になってみませんか?
パワポの前でため息をつく時間は、もう終わりです。
さあ、新しい時代の資料作成を、今日から一緒に始めましょう。
