なぜ日本は取り残されるのか？生成AI活用、世界最下位の衝撃と逆転への道すじ

2025年08月08日 09:132025年06月27日 09:34

経営・企画 / 総務・事務 / コンサル

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「あなたの会社では、仕事で生成AIを使っていますか？」

もし、この問いに「いいえ」と答える人が多いなら…。それは、あなたの会社だけの話ではないかもしれません。実は今、日本全体が、世界的なAI革命の波から、静かに、しかし確実に取り残されようとしている、という衝撃的なデータが発表されました。

世界的なコンサルティングファームであるPwCが、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、シンガポールの5カ国の企業を対象に行った調査。その結果は、私たちの未来に警鐘を鳴らすものでした。
なんと、業務で生成AIを「導入している」と回答した日本企業の割合は、わずか19%。これは調査対象の5カ国の中で、断トツの最下位でした。

アメリカでは52%、シンガポールでは49%の企業がすでに導入済み。この数字を見て、あなたは何を感じますか？

「やっぱりな」という諦めでしょうか。それとも、「うちの会社も早くなんとかしないと」という焦りでしょうか。

この記事は、単に「日本は遅れている」という事実をお伝えして、不安を煽るためだけのものではありません。

なぜ、こんなにも差が開いてしまったのか。その根本にある、私たち日本人特有の「壁」の正体は何なのか。そして、この絶望的にも見える状況から、どうすれば一歩を踏み出すことができるのか。

傍観者でいるのは、もう終わりにしませんか？この記事を読み終えたとき、あなたが未来を変えるための「最初の一歩」を踏み出すきっかけを掴めるよう、一緒に考えていきたいと思います。

なぜ日本だけが…？生成AI活用の壁となっている３つの「正体」

最下位。この不名誉な称号を、私たちはなぜ受け入れなければならなかったのでしょうか。PwCの調査報告は、その原因を「経営層の意欲の乏しさ」にあると指摘しています。
しかし、本当にそれだけなのでしょうか。私は、もっと根深く、日本社会に根付いた3つの「壁」が存在しているように感じられてなりません。

1. 見て見ぬフリ？経営層の「他人ゴト」意識

今回の調査で最も衝撃的だったのは、日本の経営層の69%が「生成AIに関する知見がない」と回答している点です。これは、他国の平均（35%）を大きく上回る数字。つまり、船のキャプテンであるはずの経営者が、新しい航路の海図を読めないどころか、そもそも読もうとすらしていない、という状況です。

海外の先進的な経営者たちは、生成AIを単なる「業務効率化ツール」や「コスト削減の道具」とは見ていません。彼らはAIを、ビジネスモデルそのものを根底から覆し、新たな価値を創造する「革命のエンジン」として捉えています。だからこそ、莫大な投資を行い、失敗を恐れずに挑戦を繰り返すのです。

一方、日本の経営層からは、「よくわからないものに、大切なお金は出せない」「前例がないことは承認しにくい」といった、慎重さを通り越した「事なかれ主義」の声が聞こえてきそうです。それは、AIの可能性を過小評価している「他人ゴト」意識の表れではないでしょうか。この意識の差が、そのまま導入率の差となって表れています。

2. 「失敗したくない」という呪いと、完璧主義の罠

「AIって、間違った情報を出すこともあるんでしょう？」「情報漏洩のリスクが怖いから、会社では使えないよ」

あなたの周りでも、こんな会話を耳にしませんか？

日本企業には、新しい挑戦を奨励する「加点主義」よりも、ミスを許さない「減点主義」の文化が根強く残っています。この文化が、トライ＆エラーを繰り返しながら進化していく生成AIというテクノロジーと、致命的に相性が悪いです。

生成AIは、完璧な存在ではありません。時には嘘をつく（ハルシネーション）こともありますし、使い方を間違えればリスクも伴います。しかし、その不完全さを受け入れ、人間が賢く付き合っていくことで、初めてその真価を発揮します。

「100%安全で、100%正確な答えを出してくれるものじゃないと使えない」。この完璧主義こそが、イノベーションの最大の敵です。車だって事故のリスクはゼロではありませんが、私たちはその利便性を理解し、ルールを守って活用しています。生成AIも同じはず。リスクをゼロにすることに固執するあまり、その先に広がる広大な可能性を見失ってはいないでしょうか。

3. 「誰がやるの？」現場の悲鳴とスキル不足の深刻さ

仮に、経営層が「よし、AIを導入するぞ！」と号令をかけたとしても、事態はそう簡単には進みません。次に立ちはだかるのが、「じゃあ、それを誰がやるの？」という問題です。

多くの企業では、DXやAI活用の担当部署が明確に決まっていません。結果として、一部のITに詳しい社員や、新しいもの好きの若手社員が「有志」として孤軍奮闘しているケースが後を絶ちません。しかし、彼らの善意だけでは、全社的な変革など起こせるはずもありません。

そもそも、生成AIを正しく、効果的に使いこなすには、専門的なスキルや知識が必要です。どんな指示（プロンプト）を出せば、質の高いアウトプットが得られるのか。出てきた情報の真偽をどう見抜くのか。これらのスキルを持った人材は、日本全体で圧倒的に不足しています。

そして、さらに根深い問題は、多くの社員が「AIは一部の専門家が使うもので、自分には関係ない」と思い込んでいることです。この当事者意識の欠如が、組織全体の学びの意欲を削ぎ、結果として活用が全く進まないという悪循環を生み出しています。

もう傍観者ではいられない。未来を変えるための処方箋

絶望的なデータと、根深い課題。ここまで読んで、「やっぱり日本はダメなのか…」とため息をつきたくなったかもしれません。でも、ここで思考停止してしまったら、それこそが本当の終わりです。

幸いなことに、私たちはまだ、未来を変えるための時間と選択肢を持っています。経営者、現場の社員、そして社会全体が、それぞれの立場でできることは必ずあるはずです。

1. 経営者の方へ：難しい理屈は後回し。まずは「遊んで」みませんか？

分厚い調査レポートを読んだり、高額なコンサルタントを雇ったりする前に、ぜひやっていただきたいことがあります。それは、経営者ご自身が、部下の目を気にせず、たった一人でChatGPTやGeminiなどの生成AIと「遊んでみる」ことです。

「来週の朝礼の挨拶を考えて」「うちの会社の弱みを３つ教えて」「新しいキャッチコピーを10個提案して」

どんなことでも構いません。実際に触れて、その驚くべき応答速度や、意表を突くアイデアに触れてみてください。同時に、その情報の不確かさや、的外れな回答といった「限界」も感じてみてください。

大切なのは、「AIで何ができるか」という機能論から入るのではなく、「自社のこの長年の課題、もしかしてAIなら解決のヒントをくれるんじゃないか？」という、自社の課題を起点とした発想に転換することです。AIを評論するのではなく、自分の「右腕」や「壁打ち相手」として捉え直す。その小さな意識改革が、会社全体を動かす大きなうねりの第一歩となるはずです。

2. 現場のあなたへ：「小さな成功体験」を武器にしよう

「会社が何もしてくれない」「上司が理解してくれない」と嘆いていても、何も始まりません。ならば、私たち現場の人間が、ゲリラ的に、しかし戦略的に動くしかありません。

その武器となるのが、「小さな成功体験」です。

大掛かりなプロジェクトを立ち上げる必要はありません。まずは、あなた個人の業務の中で、生成AIを使ってみましょう。

面倒な定例会議の議事録を、音声入力とAI要約で30分から5分に短縮する。
なかなか筆が進まないお詫びメールの文面を、AIに下書きしてもらう。
企画書のアイデアが煮詰まったとき、AIにブレスト相手になってもらう。

そして、ここで重要なのは、その効率化によって生まれた「時間」や「心の余裕」、あるいはAIからもらった「面白いアイデア」を、自分だけのものにしないことです。

「見てくださいよ、この前の議事録、AIに作らせたら5分でできたんですよ！」
「このメールの言い回し、AIに相談したらすごく丁寧な表現を教えてくれて、助かったんです」

そうやって、あなたの「小さな成功体験」を、熱量をもって周囲にシェアしてください。一人、また一人と「それ、どうやったの？」「私も使ってみたい」という仲間が増えれば、それはやがて無視できない「声」になります。ボトムアップの変革は、いつだってそんな風に始まるのですから。

3. 社会全体で取り組むべきこと：学びの文化を再構築する

究極的には、個々の企業努力だけでは限界があります。日本社会全体が、「学び」に対する価値観をアップデートする必要があります。

AI時代に求められるのは、特定のプログラミング言語やツールの使い方といった、陳腐化の早いスキルではありません。むしろ、常に新しいことを学び、変化に適応し続ける「学習能力（ラーナビリティ）」そのものです。

一度社会に出たら勉強は終わり、という時代は完全に終わりました。企業は、社員のリスキリング（学び直し）を、福利厚生のような「コスト」ではなく、未来を創るための「投資」と位置づけるべきです。そして私たち個人も、日々の業務に追われる中でも、意識的に新しい知識やスキルに触れる時間を確保する。そんな「学びの習慣」を、社会全体の文化として根付かせていく必要があります。

まとめ：悲観はもう終わり。日本の逆襲はここから始まる

「生成AI活用率、5カ国中最下位」

この事実は、重く、そして厳しいものです。私たちは今、間違いなく世界のAI革命から周回遅れの位置にいます。

しかし、見方を変えれば、最下位ということは、世界で最も「伸びしろ」があるということでもあります。
他の国がすでに「80点」を取っている中で、私たちはまだ「19点」。ここから1点ずつでも積み重ねていけば、その成長率は計り知れません。

必要なものは３つです。

経営層の「当事者意識」への転換。
現場から始まる、草の根の「小さな成功体験」の連鎖。
社会全体を覆う、「学び続ける文化」の醸成。

これら３つの歯車が、少しずつでも噛み合い始めたとき、日本の逆襲が始まると私は信じています。デジタル化で遅れをとったと言われた日本が、その真面目さ、緻密さ、そしてチームワークを武器に、AIという新しい道具を手にしたとき、世界を驚かせるようなイノベーションを起こせるポテンシャルは、十分に眠っているはずです。

悲観して立ち止まるのは、もう今日で終わりにしましょう。この記事を閉じた後、あなたが踏み出すその小さな一歩が、きっと日本の未来を変える力になるはずです。

引用元

https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025.html